盛岡タイムス Web News 2012年 5月 18日 (金)

       

■  〈大連通信〉10 南部駒蔵 夫婦

 結婚していながら一人でこの大学で留学生活を送っている、というのは一般的に考えれば、問題かもしれない。留学で中国に行くというと、私は幾人もの人に「奥さんを連れて行かないのですか。一人で行くんですか」と尋ねられた。ニヤニヤして「遊んでくるんですね」と言う人もいた。率直には言わないが、この夫婦は仲が悪い、亭主関白だ、破綻している、と思う人もいるようだ。

 私のことはともあれ、老人留学生の語った、いくつかの興味深い言葉がある。

 ある男性は言った。「家にいると妻が怖くてね。毎日うるさく言われるんで、妻が外に出るとほっとするんです」と。彼の留学は、妻から逃れるという無意識の動機(?)が隠されているのかもしれない。その妻なる元看護師は彼のために、わざわざメシマコブをもって大連に来てくれた。中国人のK君に言わせると、日本女性らしい気配りのある素敵な女性で、私も日本女性と結婚できたら、と思うような人なのだという。

 また別の女性は言った。「夫には悪いけど、どうしても口うるさく言ってしまうんです。言わずにおられないんです」と。彼女の留学の動機には、夫を解放してあげたいという優しさ(?)が潜んでいるかもしれない。彼女は大阪人で会話はすべて大阪弁で通しているが寮の生活で何か不具合があると、寮の管理人に強く抗議する。その強さにこれはかなわないなと、と思い、まだ会ったこともないご主人に私は同情している。

 ある名古屋の女性は、ご主人が莫大な遺産を残して亡くなったとかで、世界中を飛び回っている。80歳近いというが、元気でとてもおしゃべり。いかにもお金がありそうに言うのが気になるがその元気さはたいしたものだ。男が一生懸命働いて遺産をたくさん残して死んでくれるのも、女性の幸せかもしれないなどと思ってしまった。

 書いているうちに、「あれから40年。あれから40年」とう綾小路きみまろの言葉が聞こえてきそうである。

 そうは言っても「妻に先立たれて、こうして来ているんです」とか、「幸か、不幸か、一人身で日本にあまり帰らず、大連で暮らしているんです」などと語る初老の男性の話を聞くとどこか寂しく感じられる。

 一日も会わずにはおれなかった蜜月もとっくの昔に過ぎ、退職後、二人家におれば争うことの多くなりがちだが、やはり夫婦とは良いものかもしれない。長持ちするためには、くっついて争ってばかりいないで、たまには離れて再会するのも新鮮であろう。海外留学などもその一つの手段となる。老人よ、海外に来たれ。

 元気なる老人多し 大連の交通大学 青春のあり (元岩手医大教授)


 

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