盛岡タイムス Web News 2012年 5月 21日 (月)

       

■  〈ジジからの絵手紙〉11 菅森幸一 軍歌との決別

     
   
     

 ジジは今でも時々軍歌を口ずさむ。別に軍歌が好きなわけじゃない。ジジの幼い日の思い出はスッポリと軍歌と重なっていて、歌うことで懐かしい70年前の自分と再会できるというだけの話だ。

 童謡や小学唱歌もあるにはあったが、「女々しい」とか「軟弱である」などの理由で、軍国少年のわれわれは競って軍歌を覚えようとした。もちろんフザケタ替え歌も遊びの中では当たり前だったが、魂の奥底にまで染み通った当時の記憶は悲しい事に今でも消し去る事ができない。

 ナポリ民謡もドイツ歌曲も外国の歌だとなじられた時代だ。いかに友邦同盟国のものだと弁解しても、あまり理解されない時代でもあったが、ジジの母さんはよく外国のものらしい子守歌を小声で歌ってくれた。後年、それは「ジョスランの子守歌」や「グノーの夜の調べ」等という素晴らしい曲であることがわかった。

 雨のように降り注ぐ軍歌と軍国歌謡の洪水から、ジジを守ろうとでもするかのような母さんの必死の思いが、今は痛いほど伝わってくる。そんな母さんの思いを知りながら、今でもジジは軍歌と同調した思い出を捨て切れないでいる。


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