盛岡タイムス Web News 2012年 6月 26日 (火)

       

■ 〈詩人のポスト〉 照井良平 「ウミネコの便り」

 ウミネコたちが鳴いている
  朝陽に向かって鳴いている
    わたしたちの
    ふるさとを忘れないでください
    わたしたちにふるさとがあったことを
    忘れないでください
    白砂の高田松原があって
    弓なりの波打ち際があって
    わたしたちの鳴く声を聞いてくれた
    ふるさとがあったことを
    忘れないでください

 朽ちそうな
  一本の松の木があって
  そのほとりでウミネコたちが鳴いている
    すげない津波が涙を奪い
    更地の渇いた街が拡がっておりますが
    青いうねりの三陸の地に
    ハマギクの花を咲かせ
    ニッコウキスゲの花を咲かせ
    ウロコ雲が光を跳ね微笑んでいたふるさと
    愛しい国があったことを
    忘れないでください

 ニャオニャオ澄んだ声で
  ウミネコたちが鳴いている
  激しく朝陽に向かって鳴いている
    湾の凪いだ海が涯に伸び
    その向こうの
    りりしく朝焼けが昇る空に
    わたしたちの鳴く声を聞いたら
    思い出してください
    潮風に強く鳴く父がいて
    ニャーニャオやさしく鳴く母がいて
    争いや原発のない
    透きとおるふるさとの空をついばみ
    風や太陽と平和を慈しんだ国を
    思い出してください
    この便りに誓って
    思い出してください

 


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