盛岡タイムス Web News 2012年 7月 11日 (水)

       

■ 〈詩人のポスト〉友へ 上斗米隆夫


   美しき訣れとなさん願わくは
     わが通夜に流せマーラーのアダージェット
                 茨城・古河市 土屋正雄


ベレー帽を少しかしげた
白い歯ののぞく笑顔は
秋田駒の頂上に立ったあのときと
おんなじだ

今日は君の告別式
古い仲間の代表三人が並んで
穏やかな遺影をみつめる

からだに麻痺があっても
俺たちより重いキスリングを背負って
決して弱音を吐かずに
いくつもの山を越え
優しい歌をたくさん詠んだ

それからあとは
奥さんを詠い
娘さんを詠い
孫の蓮花ちゃんを詠い
命の不思議を詠った

容態の悪化したその日
娘さんと二人
ベートーベンの第九 
「歓喜の歌」を
イヤホーンで聞きながら
永い眠りに就いたという


斎場には
君の願いどおり 
マーラーの五番第四楽章が
流れている

きっと君は
一杯やって
あのころのように
オーケストラの指揮者になりきって
タクトのつもりで
箸なんか振っているだろう
          (平成二十四年六月二十八日)


 

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします