盛岡タイムス Web News 2012年 8月 22日 (水)

       

■  液浸標本の修復に助っ人 日本魚類学会研究者ら8人

     
  魚類の液浸標本の修復作業に励む研究者や学生たち  
 
魚類の液浸標本の修復作業に励む研究者や学生たち
 
  盛岡市の県立博物館で21日から、東日本大震災津波で被災した陸前高田市立博物館の魚類などの液浸標本の修復作業が始まった。藤井千春主任専門学芸調査員が日本魚類学会に協力を呼び掛け、北海道大学、国立科学博物館、県水産技術センター、岩手大から研究者や学生計8人が参加している。県立博物館は震災後、被災した沿岸の博物館施設の貴重な標本類や古文書などを救出し、修復する作業を進めてきた。携わった多くの関係者の思いを受け止め、未来に引き継ぐ作業がこの夏も続いている。

  陸前高田市立博物館は2階建ての建物が天井まで浸水。展示室や収蔵庫はがれきに埋まり、当時の職員6人は全員が死亡または行方不明となった。昨年4月から県教委や県内の博物館関係者らが同館の所蔵資料救出に着手。搬出した約10万点の収蔵資料の中に、魚類や菌類の液浸標本もあった。植物や昆虫など傷みやすい標本の修復を優先したため、魚類の液浸標本の修復は今回初めて着手した。

  1階の収蔵庫で見つかった標本は、すべて砂混じりの海水に浸かって泥まみれ。学名や採取日などを記したラベルがはがれていたり、長年の保管で魚体が色あせてしまっているものも少なくない。それでも搬出した約200本の標本瓶のうち、ラベルがまったくないものを除く魚類50件、菌類48件、甲殻類など約20件は、後世に引き継ぐ価値があるものと分かった。

  今回の作業は4日間の予定。ホルマリンに浸かっていた標本はアルコールで洗浄したあと、学名がはっきりしないものは、ひれの形や筋の入り具合などを顕微鏡で調べ、図鑑で確認する。新しい標本瓶に移し、修復が済んだものは、パソコンに情報入力しデータベース化する。魚類が専門の研究者や学生たちは一つ一つ丁寧に、作業に取り組んでいた。

  陸前高田市立博物館で収蔵していた魚類標本は、ほとんどが気仙地方近海で採取されたもの。作業に加わる国立科学博物館の松浦啓一研究調整役・動物研究部長は「標本は一般にはあまり目が向けられないものだが、その地域に、いつ、どんな生物が生息していたのか分かる貴重な環境指標となる。地域の博物館が、身近な生物の標本を残しておく意義は大きい」と話す。

  県水産技術センター漁業資源部の後藤友明主査専門研究員も「三陸の海も長期的に見ると、水温が高い時期と低い時期がある。地球の温暖化などを検証する上でも、地元の博物館の標本は大事」と語った。

  このほか陸前高田市立博物館から回収された資料では、昆虫標本約2万4千点のうち、約1万4千点、植物標本は約1万5千点のうち約8千点が全国の博物館や研究施設へ送られ、清浄・復元作業が続けられている。同市立海と貝のミュージアムで被災し、流失を免れた約6万点の貝類標本の洗浄、乾燥作業も進む。

  藤井学芸調査員は「被災した標本の数が多く、一つの博物館だけでは手に負えない。全国から応援していただけるのはありがたい。被災した博物館が、一日も早く地域で再興できるよう力を尽くしたい」と話している。



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