盛岡タイムス Web News 2013年  6月  4日 (火)

       

■  詩人のポスト「かっこう」藤野なお子

   


新しい住宅が続く 新開地
のびたての若い枝々

しゃきしゃきと尖った葉先きが
風にゆれる 水田は
深く記憶の底に沈んで
上に道や建物が幾重にも重なり
湿り気を含んだ
あの風はもはや 遠い

……ゆめの中で かっこうの声がする
立ちこめる 白い霧の中から
空をきり裂くように響いていく
しんとして立つ 高い木立の影
夜明け
あちこちで啼き交し
ときには軽く だが次第に激しく
心を地の底から よび戻すように
かっこうはいのちの限り啼きつづけ
無明の闇の中で心をよび求めていた……

たちこめる朝霧の中で
目ざめていく伸び盛りの木々の
みどりはあざやかに輝き
さわやかな風にゆれる
だがかっこうは ここにはもうこない

新しい居場所を求めて
とんでいった とり
まちの店先にはわらびや鈴蘭が並び
季節は変ることなくめぐってくるのに
あの声を 耳にだけ残して

風が渡っていく
静かに雲が 時の中を流れる


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