盛岡タイムス Web News 2013年  6月  11日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉176 及川彩子 スォーレのおばさん

     
   
     


  初夏になると、何年かに一度、スォーレのマリアおばさんが、わが家を訪ねてきます。スォーレは、イタリア語で「カトリック修道女」。近所に住む親戚を訪ねる際、わが家にも立ち寄ってくれるのです。

  先日、訪ねてきたマリアおばさんは、今年83歳〔写真〕。そんな年には見えぬりんとしたお姿で、日本の震災や私たちの親戚に気を使いながら、今年も、恵みの言葉を、娘たちに聞かせてくれました。

  修道会は、大きく分けて2種類。一つは、世俗を離れ、祈りと労働で神に仕える規律厳しい観想修道会。現在国内に5百カ所あり、7千人余りのスォーレがいるそうです。

  もう一つは、さまざまな活動を通してキリスト教布教に努める活動修道会。街中でも見かけるスォーレのほとんどが属するこの修道会では、養老院、病院、学校経営、生産活動などを行っています。教員や看護師などの資格を生かし、活動する人も少なくありません。マリアおばさんもその一人。今も、ベネチアの小学校で授業を受け持っています。

  ヨーロッパの修道院は、何世紀も前から文化の宝庫。修道士や修道女の活動は、植物学や医学、音楽、美術など、あらゆる分野に寄与してきました。そのおかげで、ヨーロッパ文化が発展し継承されてきたのです。

  「どうしてスォーレになったの」と娘が尋ねると「神様から呼ばれたからよ」と言って、マザーテレサの言葉を教えてくれたマリアおばさん。宗教の枠を超えて語りかけるそのまなざしに、心掬(すく)われる思いでした。

  その言葉とは『スォーレは毎朝、また困難に耐え抜かなければいけないと知り、目を覚まします。祈りは力を与えてくれます。神の恵みを頂くためには、絶えず祈り、絶えず与えることが必要です。そうしなければ、私たちは生きられないのです』。

  おばさんの胸に掛かる、いぶし銀のロザリオ。その重さが、すべてを語っているようでした。


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