盛岡タイムス Web News 2013年  8月  6日 (火)

       

■  農林水産業などの風評被害 請求者に煩雑な手続き 原発事故受け賠償説明会 盛岡で


     
  東電(写真奥)による説明が行われた風評被害の賠償に関する説明会  
  東電(写真奥)による説明が行われた風評被害の賠償に関する説明会
 

 本県の農林水産物とその加工品、流通(販売)への東京電力福島第一原発事故に伴う風評被害が賠償請求の対象になったことを受け、県と県内市町村は請求や支払いに関する説明会を5月末から開いている。盛岡市では5日開かれ、東電の担当者から説明があった。説明では請求から賠償金支払いまで最短約1カ月間だが、確実に風評で損害を受けたと証明できる資料の準備などが不可欠で、どこまで請求できるかなどは「個別対応」となっている。関係者への周知不足や時効などの不明な点も多い。

  本県で風評が賠償対象になると決まり、公表されたのは今年3月27日。観光業の風評は昨年対象になった。説明会は5月末から盛岡市を含めて16市町で行われ、今後6市町村で開かれる予定。うち矢巾町で28日、滝沢村で9月13日に開かれる。業界団体対象にも別途開かれている。

  盛岡市会場には11者12人が参加。農林水産業が個人含め4者4人、加工・流通業7者8人だった。個別説明もあり計9者が希望した。県行政書士会も請求代行のニーズを見込んで同席した。

  東電からは東北補償相談センター相談第2グループマネジャーの勝又靖典部長ら13人が出席した。勝又部長は冒頭陳謝し「被害を受けた方が適切に賠償されないことはあってはならない。請求に結びつくよう全力を尽くす」と約束した。

  説明によると、事業者は3カ月から最長12カ月単位で賠償請求をし、請求が認められた場合に賠償金が支払われる。必要なら別の時期について改めて請求する必要がある。

  請求する場合、商業登記簿謄本や住民票など事業実態を把握する資料を用意する必要がある。同時に風評で売り上げが減少した(逸失利益)とする「相当因果関係」の証明や原発事故前の収支なども準備が必要となる。県行政書士会の畠山弘副会長は「観光業の風評より確実に煩雑だ」と指摘している。

  加工品では風評の原因となる原料が50%以上含まれる場合が対象。この場合、原料が含まれない風評は賠償の対象外になるが、勝又部長は「個別の事実を確認した上で対応する。一律には該当しない」と説明した。

  また、時効については民法上の不法行為で3年以内と規定されている。今回対象になった風評被害賠償が公表された3月末から理論上、時効が発生するものの、東電では請求できることになった日から起算するなど柔軟に対応する構え。

  勝又部長は「請求していなくても賠償の対象になることを知らなかったというケースも出てくる。適切な賠償が受けられないのは、あってはならないこと。被害の続く限り対応する」と述べた。一方、時効を無視してどこまで対応するかは不透明だ。

  同市内の畜産物加工業者の男性担当者は「賠償対象になったのも説明もなぜ今さらなのか、遅すぎるという思い。国もさんざん書類提出やアンケートを求めてきたのに岩手県の被害に対する認識が甘い。金には換算できない影響が出ているのに」と、やりきれなさをにじませた。

  同市内の水産食品加工業者の男性は「東電の対応がよくて良かった。本社は釜石市にあり、現在盛岡でも操業している。震災津波か原発事故の風評か分かりづらいところがある」と話していた。

  同市三ツ割のちいさな野菜畑の小島進さんは個別説明を受け「腰が低く丁寧な対応だったが、お客の求めに応じて放射性物質検査器を購入したと証明する資料の提出を求められた。帰って相談する」と述べた。

  同市川目の産直てんぐの里106の下川陽子組合長は「地元で持ち込まれたキノコ類や山菜などの売り上げの10%で運営している。手数料の減少分が該当するが、額の大小ではなく請求するべきだと考えている」と話した。


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