盛岡タイムス Web News 2013年  11月   7日 (木)

       

■  “現代の名工”に浅沼信夫さん 型紙起こし技術を確立 厚労相卓越技能者表彰 16歳からタイル張工


     
   タイル作りに励む浅沼信夫さん。作業場には浅沼さんが手掛けてきた数々の名作が並ぶ  
   タイル作りに励む浅沼信夫さん。作業場には浅沼さんが手掛けてきた数々の名作が並ぶ
 

 盛岡市下鹿妻のタイル張工の浅沼信夫さん(73)が、厚生労働大臣が行う卓越した技能者の表彰「現代の名工」に選ばれた。浅沼さんは16歳からタイル張工に携わり、「型紙起こし」という独自の技術を確立して作業の効率性を高めた。浅沼さんは「名工は夢のまた夢だった。選ばれて感激している。今は後継者の育成に燃えている」と後進に継承させていく意欲をみなぎらせる。表彰式は7日、東京都新宿区のリーガロイヤルホテル東京で行われる。

  タイル張り作業の1級技能士の国家資格を持つ浅沼さんがタイル張りに携わったのは16歳のとき。中学を卒業した浅沼さんは親戚の紹介で、1956年6月に盛岡市仙北町のタイル屋に弟子入りした。その後、東京都や秋田県などを転々として修業を積み、80年ころに同市下鹿妻地内に事務所を構えた。

  型紙起こしはタイル技術を後進に指導する中で編み出す。95年から岩手中央高等職業訓練校でタイル技術の指導員をしている。これまで70人ほどの学生を卒業させてきた。タイルを切りたい形にするため、その形に切り取った紙をタイルに乗せ、紙に合わせて印を付けて切る方法を考案。分かりやすい指導につながり、実際の作業も正確さが増して効率的になったという。

  2006年には県卓越技能者表彰を受賞していた浅沼さんだが、仕事に携わった当初は、生活をしていくためという思いだけで働いていたという。少しずつ経験を重ねていく中でやりがいを見いだしていった。

  「タイルが完成したときの感動はなんとも言えない。満足することもあれば、夜に寝られないほど悩むときもある。57年間やってきたが、お客さんに喜ばれるあの感動は職人でなければ分からないだろう」とタイルの魅力を熱く語る。

  現在は主に若者の指導に携わっている浅沼さん。タイル職人は不足している状況という。同校で過去に技能五輪全国大会で活躍する学生を育てた実績があるが、現在は東日本大震災の影響などがあり、タイル張りを指導している学生はいないという。裾野を広げるため、夏休みの時期には小学生対象にアートモザイクを取り入れたものづくり教室を行うなど、将来を見据えたイベントにも余念がない。

  各地を転々として厳しく長い下積みを経て、夢の名工に選ばれた浅沼さん。苦しさを経験しているからこそ、後進の指導にも熱が入る。「少なくとも10年経験を積まなければ一人前とは言えない。卒業生から電話がたまにかかってきて、(タイル張りを)辞めたいと言われることもある。そのたびに、一人前になるまでは我慢しろと言い聞かせている。卒業生が技術を身に付けて、働いているのが後継者を育てる上での喜び。これからも後進の育成に携わっていきたい」と技術の継承に力を込める。

  同表彰は1967年の創設。技能者の地位と技能水準の向上、将来を担う若者に目標を示して精進する機運を高めることを目標としている。今年の表彰予定者は全国で150人。平均年齢は63歳で最高齢者は88歳、最年少は42歳。


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