盛岡タイムス Web News 2013年  11月   8日 (金)

       

■  〈潮風宅配便〉174 草野悟 しあわせの親子漬け“逆遡上”


     
   
     

 岩手沿岸の秋冬の大事な漁の一つに「秋サケ漁」があります。震災後、不安だった回帰も期待通り復活し始め、漁業者にも明るい気持ちを与えてきました。ところが今年は海水温が高温で、サケが岸に寄らず遡上(そじょう)も大幅に遅れました。10月10日時点では、昨年の約半分の漁獲量となっています。実に残念ですが、自然の摂理の中では、ただただ回復を祈り、地道にふ化と稚魚の放流を行っていくしかないと思うばかりです。

  ところが「なんということでしょう」。今年の秋サケも、いつもの通り品質は最高なのです。もちろん味は「岩手が一番」と身びいきながら言ってしまいたくなるほどです。

  この三陸沿岸の沖取り秋サケを、芸術の領域まで高めてくれるのは、何度もご紹介している「直利庵の親方・松井大将」です。先日伺ったら、「草野さん、私ね、ご飯の上にこれをかけて食べるのがすごく好きなんですよ。今年のは特にうまくできました」といつものように「特製鮭の親子漬け」を頂いてしまいました。

  で、早速、玄米ご飯を炊き、教えていただいた通り、身を3切れ、氷頭(ひず)を2切れ、イクラを数粒、それに漬けタレを回しかけました。ピンク色に輝くサケの身は、どこまでも神々しく、子であるイクラがプリプリとまとわりついています。ヨダレを抑えるのは至難の技ですが、薄く切った氷頭が、「早く食え」と催促するもので、この三つをまとめて口に運んだ次第であります。上品な漬けタレの風味が舌の上を通り過ぎ、氷頭の心地よいかみ心地が、ため息となって出てきます。ピンクの身は、柔らかくしかも新鮮で甘みがじゅわーっとにじみ出します。この秋一番のごちそうに、日ごろの疲れが(あんまり疲れてはいないけど)はじけ飛んでいくようです。頂いた二つのパックは、すでに一つが空です。催促をしているわけではありません。あっという間に箸が進むもので、まるで魔法のようだな…と。

  宮古から盛岡に運ばれ、「親子漬け」となってまた宮古へ戻ってきた秋サケ。素晴らしいおいしさになって戻ってきました。サケって盛岡から沿岸に遡上するのですね。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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