盛岡タイムス Web News 2013年  11月   13日 (水)

       

■  生活困窮世帯支える 被災者やひきこもり若者に生きがい フードファーム事業 SAVE IWATEなど 盛岡市内


 東日本大震災津波で内陸に避難した被災者と就労訓練中の若者らが、盛岡市内の農園で一緒に野菜を作り、生活に困窮する被災者に配布する「フードファーム事業」が展開されている。生活困窮家庭を支援すると同時に、家に引きもりがちな被災者や若者へ生きがいや交流の場を提供し、社会参加を後押しする狙いもある。人と人とが支え合う社会の実現に向けた意欲的な取り組みとして注目される。

  一段と寒さが増した12日、盛岡周辺に住む被災者5人と就労訓練中の若者、スタッフら約30人が、同市本宮のおおみや園芸の貸し農園にある「フードファーム」(約300平方b)に集まり、キャベツやサトイモを収穫した。畑に残った茎を片付けたり、収穫したイモの泥を落としたり。約2時間の作業後は、料理が得意な被災者やスタッフが調理した豚汁で体を温めた。

  津波で妻を亡くし、釜石市から転居した橋本正喜さん(62)は市内の息子の家のそばで一人暮らし。「家に閉じこもってばかりでは、どうしようもない。みんなと話していれば、気も晴れる」と明るい表情。就業訓練中の同市黒川の金野祥樹さん(30)も「生産者の気持ちもよく分かり、学ぶことが多い。いずれは自立し親に仕送りができるよう頑張りたい」と前を向いた。

  同事業は盛岡市の被災地支援チームSAVE IWATEをはじめ、引きこもりがちな若者や精神障害者らの就労を支援する団体、病院、農業事業者ら8団体が協力し5月にスタート。毎週1回、被災者のほか、各団体で職業訓練中の若者やスタッフが参加し、野菜作りに励む。収穫した野菜は、震災で盛岡地域に避難し、経済的に苦しい約120世帯に無料で配布している。

  初めは打ち解けて作業するのが難しかったが、回数を重ねるごとに互いの距離も縮まった。毎週決まった時間、自然の中で汗を流すことで、働く意欲がよみがえり、就職につながったケースもある。

  「いつもとは、全然違った表情を見せてくれる。誰かの役立つことが自信にもなっている」と、いわてパノラマ福祉館の大坪幸広生活支援員。おおみや園芸の大下信子さん(47)も「初めて種イモから育てたジャガイモを収穫したときの、みんなのうれしそうな顔が忘れられない。畑って、こういう使い方もあるんだと気付かされた」と手応えを語った。

  フードファームは次年度以降も継続して実施する考え。資金面でのやりくりが大きな課題で、事業の内容を固めながら、持続可能な運営方法を検討していく。

  SAVE IWATE生活支援グループリーダーの阿部知幸さん(39)は「食を中心とした取り組みは、被災者支援にとどまらず、さらに大きな意味での見守り活動や、セーフティーネットの構築につながる。将来的には人と人とのつながりを深めながら弱者を支えるフードバンクの設立につなげたい」と意欲を燃やす。

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  SAVE IWATEは30日午後1時半から、社会的弱者を支える先進的な取り組みを進める団体の代表者をパネリストに迎え「よりよく生きるためのフォーラム」を盛岡市紺屋町の勤労福祉会館で開く。2008、09年末年始の「年越し派遣村」の開設などホームレス支援に取り組む湯浅誠さんが基調講演。NPO法人フードバンク山梨の米山けい子理事長、栃木県若年者支援機構の中野謙作理事長、もりおか復興支援センターの生活支援員でもある阿部さんがパネル討論する。


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