盛岡タイムス Web News 2013年  11月   26日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉188 及川彩子 ヨーデルの歌声


     
   
     

 旅の楽しみといえば、興味深い土地の名物、珍しい建物、聞き慣れない言語…主人の仕事柄、ヨーロッパやアフリカの国々などを訪れる機会の多い私たち家族にとって、一番印象に残るのは、その土地で触れた音、民族音楽かもしれません。

  モーツァルトも影響を受けたトルコ楽隊の行進、「千夜一夜」のアラビアの踊り、アフリカの砂漠の太鼓、中東ジプシーのバイオリン、情熱のフラメンコなど、旅の記憶が音楽とともによみがえるのです。

  先日訪ねた、オーストリアの町インスブルックでは、本場のアルプス音楽・ヨーデルを聴くことができました。「ヨーデル」と言えば、低音と高音(裏声)を使い分けて発声する独特の歌唱法です。

  心躍らせ「民族音楽の夕べ」に出掛けて行くと、チロルの民族衣装を着た歌い手や楽器隊が舞台にずらり。はるか山々に響く巨大なアルペンホルンの序奏に始まり、木こりに扮(ふん)する踊り手たちの手拍子を合図に、声を自在に操りヨーデルが始まりました〔写真〕。

  本来、夏の間、標高の高い山小屋で牛を放牧しながら過ごす牧童が、下界に無事を伝えるために使用された裏声発声で、昔の知恵で、小さくても遠くに届く周波なのだとか。また、声帯とは別の器官を使うので、風邪で声がつぶれても大丈夫なのだそうです。

  その歌詞のない詠唱が、次第に民族歌として発展。澄んだ高音と力強い低音が、こだまのように掛け合う歌が生まれたのです。

  それに、3b余りもある長いホルン、ハープやツィターなどの弦楽器、大きさを変えて音程を操作するカウべルの響きが重なると、まさにアルプス賛歌。風土から生まれた独自の音楽は、宗教的儀式にも似て、私たちの心をも揺さぶるのでした。

  次第に舞台は、太鼓やラッパも入っての大合奏。会場に詰め掛けた各国の観光客も踊り出し、民族を超えたフィナーレとなったのです。


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