盛岡タイムス Web News 2014年  1月  21日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「永訣の海」金野清人



  
ノリ子叔母さん
そちらから
高田松原が見えますか

三年経っても
寝惚けたネガのように
水平線が曇っているのは
濃いガスのせいばかりでなく
私の記憶かもしれません

あの日から
忘れようとしても
忘れられないから
広田湾の空は
曇ってしまったのでしょうか

晴れの日さえ
なぜか
海はハレーションをおこしてしまうのです

いま
襲われた高田松原に
祈りの一本松が
凛とした姿で立っています
まるで
生前のノリ子叔母さんのように

あの日
高田町の自宅から気仙川の上流まで
巨大津波にさらわれ
無念の最期を遂げたノリ子叔母さん

あなたを呑み込んだ海に向かって
私は声を限りに叫んでいます

 親切な叔母さんを返せ
  恩愛の叔母さんを返せ

 


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