盛岡タイムス Web News 2014年  2月  4日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉193 及川彩子 友情ワインの冬


     
   
     

 暖炉の火を囲み、子どもたちはココア、大人たちはホットワインなどで、夜長おしゃべりに花を咲かせる、ここ北イタリアの長い冬。「ブルレイ」と呼ばれるホットワインは、赤ワインに、レモン、砂糖、ショウガを入れて煮立てた冬の名物。別名「友情ワイン」。そのワインを、大きな器に入れ、みんなで回し飲みするのが土地の流儀です。

  ブルレイ容器は、グロッラと呼ばれ、放射状に四つ、六つと飲み口のあるふた付きの器。ここアジアゴの土産店にも、素朴な木彫り製の器が並び、アルプス暮らしの土産物として、人気を集めています〔写真〕。

  そしてブルレイと一緒に出されるのが、ナツメヤシ、イチジク、アンズなどのドライフルーツ。普段、イタリア人のワインに欠かせないのがチーズですが、塩分の取り過ぎにならないよう、カリウムを多く含むドライフルーツが添えられるのです。

  また、イタリアには「友情の証し」と呼ばれる、もう一つのワインがあります。陰干しにして作った干しブドウを醸造、3年から5年間寝かせた甘口の「ヴィン・サント」です。昔から、キリスト教の儀式に用いられたことから、「聖なる(サント)ワイン」と呼ばれているのです。

  来客には、あいさつ代わりにヴィン・サントのグラスを差し出す、気さくなイタリア人。そのヴィン・サントに欠かせないのが「カントゥチーニ」という固いアーモンド入りビスケット。かむと、コリコリッと音がするので「小さな歌」という意味の名が付いたのです。

  そのカントゥチーニは、ヴィン・サントに浸し、軟らかくしながら食べるのが、正式な食べ方。グラスとカントゥチーニを手に、会話も一層弾みます。

  この国には「共に酒をくみ交わさない者は泥棒かスパイ」という、ことわざがありますが、ブルレイとヴィン・サントを介した友情に、これからも助けられそうです。
 


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