盛岡タイムス Web News 2014年  2月  25日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「雛人形」藤野なほ子

 

 
押入れの奥に眠る
古びた雛人形を飾った

大正時代 あまりにも幼なくして
この世を去った 伯父の長女
そのあとは男子ばかりで
雛人形の出番はなかった
私が生まれると いち早く
祖母はそのお雛様を家に持ってきた

殺風景な家には珍らしい明るい輝き
どんな時でも毎年飾った
お内裏様と官女達
小ぶりではあるが 嬉しかった
古風な気品のある顔立ちと 優雅な姿

年毎に華やかになるデパート売場で
先年ふとみたある人形の
打掛けの色と模様が
あまりにも家のお雛様と似ていた
店名も同じだった
作る人の持つ 伝統の誇りと重み
長い時の流れの中に
人も趣向も大方は様変りしていくのに
底に流れる心の思いが
人形の中に今も生きて語りかける

前の持主を知る人は誰もいない
戦後の混乱の中で
飾りも一部なくなってしまったが
この家にずっといる
お雛様達は幸せだったろうか
今は 住む人と共にひっそりと古びて

花びんに ふんわりと咲いた桃の花
心に あかりがともる
淡い空は夕焼けだった



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