盛岡タイムス Web News 2014年  5月  20日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「拳の海」照井良平


  

 はなっ垂れ小僧たちが拳を挙げている

 三陸の海に生まれて
  岩場や砂浜であれこれ無邪気に戯れ
  お昼用のトマトやリンゴを海に投げ入れて
  塩味の皮にかぶりつき
  とことん揺り籃の海と戯れた
  小僧たち

 今 岩場もトマトもない
  底 この海の底のどこかで
  無念の唇を噛み締める はなっ垂れ小僧たち
  を育てた穢れのない青いグローバルな海
  海の中の海 三陸の海で
  心までもが潮で染め上がり
  いつも潮で光っていた浜のはなっ垂れ小僧たち
  の声 声 声が浜を返せふるさとを返せと
  あれから3年目の昨日も今日も
  海の底から聞こえてくる

 その三陸訛の声には
  小僧たちが戯れた小さな半島が突き出ていて
  岬は目の赤いウミネコが群れ
  いつもフィヨルドの夢に凪いでいた
  夢は黙って海を夕焼けに染め
  ウミネコの鳴く声を小僧たちに聞かせていた
  そんな 地図がリアス式海岸と呼んでいた
  入江の がらんどうのふるさとの海で
  笑顔が見えない希望が見えない
  国の成長ってなんだ
  グローバルってなんだ
  と と ……

 はなっ垂れ小僧たちが拳を挙げている

 


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