盛岡タイムス Web News 2014年  6月  24日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「シュガー」蟹沢小陽子


彼はいつも喪服を着ている
いつどこで誰が亡くなっても失礼のないように
死神と呼ばれても彼は喪服を着ている
彼のことを天使と呼ぶ人もいるからだ
真っ黒い服は縁起が悪いと眉を顰(ひそ)める人の前を過ぎると
黒は高貴な色だと手を合わせ拝む人が現れる

本当は喪服を着ているわけではない
服は普通だ、喪服を着ているのは心だ
車に引かれそうになった猫を助けた彼のせいで、運転手が運転を誤ったとか
恐ろしいほど些細(ささい)なことで、彼は死神と罵(ののし)られ、天使と崇められている
見えないはずの喪服を人は見透かしている
見えないから見たいものを見ているだけだということを、彼はよく知っている

彼は本当は人ですらない
本当はただの黒い鏡なのに
人は誰も気づいていない
そこに人がいないことにすら、誰も気がついていない



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