盛岡タイムス Web News 2014年  9月  6日 (土)

       

■ 〈体感思観〉被災地発「好齢ビジネス」馬場恵


 大震災から間もなく3年半。陸前高田市広田町の仮設住宅団地「長洞元気村」の事務局長村上誠二さんと久しぶりに話した。発災当時、家を流失した長洞の住民は、残った同じ集落の家に分宿。米や薬を分け合って命をつないだ。絆を強めた住民たちは、一人の脱落者も出さず、一緒に高台移転しようと奮闘している。

  自力で同じ地区内に集団移転用地を見つけ、造成が済んだ。新しい住宅の建築が始まるまで、あと一歩。けれども、まだ難問はある。

  仲間のじいちゃんの一人は、流失した自宅のローンが残ったままだ。心配する親族から「新しい家を建てるのは待て」と諭されている。気丈なじいちゃんも「息子たちにまで迷惑をかけられない」と集落から遠く離れた災害公営住宅に入ることを検討している。

  海の仕事が三度の飯より好きな人だ。運転免許もない。「内陸のアパートに閉じ込めてしまったら、今までのように元気ではいられなくなる」と村上さん。

  「若者の流出を食い止める企業誘致も必要だろう。だが、さしあたって、やらなければいけないのは、目の前にいる高齢者が元気に生きがいを持って働ける環境を作ることだ」と力を込める。

  元気村では、仮設住宅を舞台に、さまざまな挑戦を試みてきた。津波の経験を語り継ぐ「語り部」やワカメの芯抜き作業などのメニューを準備。有料で被災地体験ツアーを受け入れている。この夏も首都圏の子どもたちや企業の研修団が大勢やってきた。女性たちは、気仙地方の郷土菓子の「ゆべし」を手作りし、販売も手掛けている。

  シルバー世代が担う、こうした活動を元気村では「好齢(こうれい)ビジネス」と呼ぶ。お金のためではない。かけがえのない古里を守り、年を重ねても生き生きと暮らすためだ。

  活動資金を捻出しようと国などの助成事業にも手を挙げてきた。村上さんは、援助はありがたいが、被災地の事情を無視した違和感を覚える制度が多いと嘆く。「被災者自身が考え、立ち上がろうとしているところを、本当の意味で後押ししてほしい」。厳しい現実と向き合いながら、前に進むリーダーの言葉には重みがある。
 


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