盛岡タイムス Web News 2014年  9月  20日 (土)

       

■ よみがえった歴史の証し 東日本大震災 被災文化財の修復終える 国立国会図書館から県博へ 吉田家文書(陸前高田市立図書館蔵)



     
   国会図書館での本格的な修復を終え、県立博物館に戻った「吉田家文書」。安堵の表情を浮かべる国立図書館の村上直子副主査(左)と陸前高田市立図書館の熊谷賢副主幹  
   国会図書館での本格的な修復を終え、県立博物館に戻った「吉田家文書」。安堵の表情を浮かべる国立図書館の村上直子副主査(左)と陸前高田市立図書館の熊谷賢副主幹
 

 東日本大震災で全壊した陸前高田市立図書館から発見され、盛岡市の県立博物館で洗浄後、東京の国立国会図書館で修復された県指定文化財「吉田家文書」116冊が19日、県立博物館に戻った。津波で塩と泥にまみれながら、多くの人の熱意でよみがえった貴重な文化財。関係者は長く地域の人に親しまれ、多方面の研究に役立ってほしいと願う。

  吉田家文書は仙台藩領だった気仙郡で代々、地元行政トップの「大肝入」を務めた吉田家に伝わる古文書121点と絵図など29点。中でも1750(寛延3)年から1868(明治元)年までの118年間に出された通達や触れ書きなどを書き留めた「定留(じょうどめ)」(95冊)は3カ年分を除いて、ほぼ完全な形で残り、当時を知る貴重な資料とされる。

  このうち「伊達政宗黒印状」など吉田家(陸前高田市気仙町)の蔵にあった6点は流失したが、陸前高田市立図書館内の特別収蔵庫内に保管されていた残りの資料は、すべて泥の中から救出された。

  県立博物館に運び込まれた古文書は、多くの学芸員やボランティアの手で洗浄・除塩し、状態を安定化させた。国の事業で、さらに本格的に修復することが決まり、2012年10月から約2年にわたって国会図書館で作業が進められていた。

  全体で約7万ページに及ぶ資料を1枚ずつ手作業で補修。穴の空いた和紙の損傷部分に新たな和紙をすき込んで補強する「漉き嵌め(すきばめ)」と呼ばれる繊細で大掛かりな修復技術を採用した。

  プロジェクトリーダーを務めた国立国会図書館収集書誌部資料保存課の村上直子副主査は「水を使う修復は損傷の危険も伴う。ページをめくるのが難しいぐらい傷みがひどいものもあったが、やるしかないという気持ちで取り組んだ」とほっとした表情。「岩手の大切な文化財が長く県民に親しまれてほしい」と願う。

  発災から3日目に、収蔵庫の中の吉田家文書を発見し、救出に動いた陸前高田市立博物館の熊谷賢副主幹は「気仙への隕石(いんせき)落下の目撃記録も記されるなど、当時の生活全般が分かる貴重な資料。歴史だけでなく多方面の情報が得られる郷土の宝物。感無量だ」と話した。

  修復を終えた吉田家文書は、少なくとも1年は県立博物館で保管し、修復後の変化がないか経過を観察。その間、デジタル画像収録などの作業を進める。一般への展示公開の機会も検討していきたいという。


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