盛岡タイムス Web News 2014年  10月  22日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉403 伊藤幸子 「さんさ時雨」

 

  音もせで萱野の夜の時雨きて袖にさんざと濡れかかるらん
                                   伊達政宗

 先日姫神ホールにて、岩手もりおか会・民謡好成会によるチャリティー発表会が行われた。昨年は福田こうへいさんも出演されたが、今年も多彩な催しで丸1日大盛況だった。私は民謡が大好き。長年のファンには出演者にも顔見知りが増え、満員の客席が沸いた。

  本日の80人の出演者のプログラムは「外山節」で開演。唄い手さん全員の歌と「福田会」ちびっ子連の踊りが花を添えた。幼児から小学生13人の中に福田こうへいさんの娘さんもいて「そっくりだね」との声が聞かれた。

  「さんさ時雨か 萱野の雨か 音もせできて濡れかかる」圧倒的に多い南部民謡のプログラムの中で、本日歌われた「さんさ時雨」。私も憧れて、歌ってみたいと思うのだがとてもとても、短い歌詞に微妙な節調が格調の高さを示し、息継ぎを含めて非常に難しい。

  この歌は旧伊達領で広く歌われ、伊達62万石の御城下仙台市はもちろん、福島の相馬、会津地方の山間へき地に入っても祝い事には決まって大勢で唱和するしきたりとされる。

  そしてこの歌の由来を、池田弥三郎さんの本でさらに詳しく知った。そもそも天正17年(1589)、藩祖伊達政宗公が会津義弘と磐梯山の麓で戦ったとき、掲出の一首を詠まれたとのこと。それを陣中の将士に歌わせたのが元だというが「信じられない、どの道、あとから付会された説明であろう」と池田氏の弁。現に福島の方では「さんさ時雨」の本家はこちらだと主張。徳川中期以降は流行唄(はやりうた)として広く歌われたものと思われるが、いつどんな経路で伊達領一帯の歌になったかは不明。

  さてこの歌の「さんさ」はおそらく中世近世流行の「ざざんざ」という囃子(はやし)ことばとつながりがあるだろうとの池田説。さらにここでの「さんさ」は「野に降る時雨のようにもとれるが、おそらく『様さ』の意味を囃子ことばから引き出したのであろう」と解説。

  この「様さ」を生かして訳すと「わたしのあのいとしいお方は、萱野に降る時雨が音もたてぬほど静かに萱野を濡らすように、いつもこっそりと私の所に忍んでやってきていつくしんでくれる」という感じか。「濡れかかる」ってなんともいえぬ人肌のなまめかしさが感じとれる。

  民謡っていいな、実りの大地、ハンドルを握りながら「雉子のめんどり 小松の下で 夫を呼ぶ声 千代千代と」と声に出して歌ってみた。
(八幡平市、歌人)



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