盛岡タイムス Web News 2014年  10月  23日 (木)

       

■  〈風の筆〉 沢村澄子「リフォームする」

 

  芸術の秋、のせいか、わたしの暮らしもバタバタバタ。今秋は四つの展覧会が続き、重なり、北上市の北洲ギャラリーでも「書のたのしみ華のよろこび」という二人展が既にオープンしている(11月30日まで)。

  個展も40回を過ぎた頃から何回目か分からなくなってしまったが(年齢も40を過ぎる頃からよく分からなくなった)、やはり長くやっていると面白いことが起こる。今度の北洲ギャラリーは住宅展示場の中にあるのだ。つまり、モデルルームに作品を飾っている。

  和室や洋室はもとより、台所にも作品を飾る。リビングといってもいろんなタイプのものがあり、そこに置かれている家具も、その雰囲気もそれぞれに違うから、その部屋に合わせた作品を設置。ギャラリーや美術館に飾るのとは大幅にそのニュアンスが異なる。一言で言えば「生活の中の書と華」。

  書も花も、もともと、わたしたちの暮らしの中に寄り添うようにあったものなのだろう。展覧会場で華々しく発表されるようになったのは戦後のことだろうか。そして、その会場というのはおよそ天井が高く、壁が白く、家具はなくて、窓もなくて、広い空間の向こうの端までずらずらといくつもの書が並んでいて、それは華展でもおよそ同じような景色なのだという。

  ところが今回は、ふんわりした白いソファの後ろの壁に、「黙」と書かれた書の入った小さな黒い額を掛けてみる。台所にはワインの空き瓶にアンスリュームの花が挿されてある。寝室には「星」と書かれた書を。下駄箱の飾り棚にも、小さな書と花を置いてみた。

  ここはリフォームを扱う展示場らしいのだが、こういうところに入ったことのないわたしは好奇心でドキドキ。一番興奮したのはお風呂場で、いくつも並ぶ色とりどりのユニットバス。このユニットバスの壁にペンキでガンガン書けたらいいな〜っ、と血が騒いだけれど、それは許可が下りなかった。「商品には書かないでください」当然です。やれれば面白いのですけれど。

  展示場があって、家具があって、わたしが書を入れて、最後に北上在住の松田萌花(ほうか)さんが花を生けてくださった。書で何かを、自分の作品で何かを伝えようとは思わなかった。人々の暮らしが少しでも明るく、楽しく、安らかで活力に満ちたものになればいい、そんな願いをもって作品を用意した。

  作品を飾るために家具の配置を少しずらしたり、そこにあったものをちょっと片付けてみたり。つまり、既存のありようを整理することによって、新たな空間、新鮮な局面が生じる、といったこともあったように思う。しかし考えてみれば、それは居住空間に限ってのことではない。わたしたちの日々の暮らし。それもまた少し手を加えることで、そこに美しい余白を生み出すことができるのかもしれず、さらには、そんな作業を繰り返すことによって、社会や人生も、より力強いものにリフォームすることができるのではないか。
(盛岡市、書家)


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