盛岡タイムス Web News 2014年  10月  30日 (木)

       

■  〈風の筆〉74 沢村澄子 傘のそれから 1


 この原稿が載る頃には盛岡市中央公民館での庭園アートフェスタも終わっている。無事終わってくれよ、と残りの会期を祈りながら、ドキドキ過ごすこの数日。

  牛乳パックで雨にも負けない傘を作る気であったことは「風の筆72」に書いた。提出した企画書の作品タイトルは「雨ニモマケズ」。予定はそうだったのだ。負けないような傘を作る気だった。ところが、作ってみたらどうにも負けそうじゃないの。どう見てもひ弱い。それで展示の時には「雨ニモ負ケソウ風ニモ負ケソウ」とタイトルを変えた。

  ふ〜らふ〜らゆ〜らゆ〜らと骨も入ってない傘を公民館の池の管理をしているお兄さんたちが池に設置してくださる。池底に太い柱を打ち込んで、そこにへなちょこの傘を縛り付けると、さらにロープを渡して、四方の松の木に固定。こんなことになろうとは夢にも思わなかった。そこへやってきたお客さんが「雨ニモ負ケソウ風ニモ負ケソウ」というタイトルに笑って「あら、私みたい」とおっしゃるから、思わず「みんなそうです」と答えたわたし。こんなひ弱なわたしのことを、何とか生かしておいてやろうと努めてくれる人々のことが、切なくてありがたくて、たまらなかった。

  ところが台風ですよ。しかも大型の。12日に避難勧告。作品一時撤去決定。お兄さんたちもまた出動して、傘を引き上げ館内へ。

  その時、わたしは言った。この後また台風が来ないとも限らないし、一度引き上げた後は、再度池に立たせなくても地面に転がして置いてもいいのではないか。3度目のタイトルは「台風ニ負ケタフリ」。

  ところがところが。「イッから!イッから!大丈夫。ヤッから!」イヤな顔ひとつせず、お兄さんたちはまた冷たい池に入って設置してくれるという。しかも、「バージョンアップしようよ。竹の骨入れよう!」と笑う。根性あるなぁ〜。中央公民館!もう盛岡は3度。区界で氷点下の気温を記録しているというのに…。

  で、傘に骨が入った。これも全くの想定外。驚いた。形がひどく良くなって、これなら立派に傘に見える。(わたしはそれまで一体何を作っていたのだろう?)
(10月10日付の岩手日報には「牛乳パックでできた雨傘ふうの物体が池に直立し…」と紹介されていた)台風一過。15日再設置。わ〜。傘だ傘だ。傘に見える〜、とわたしは喜んだ。ところが、17日の突風・強風は、恐れていた台風のそれをはるかに超えていて、その立派にできた傘が倒れてしまったのだ。

  翌朝、一番に公民館へ。無残に壊れた傘を引き上げ、解体しようとしたとき、お兄さんたちの顔が浮かんできて、手が止まった。無断ではできないことだと思った。案の定、出勤してきたお兄さんは言う。「雨にも負けず、っていうくらいだからサ、もう一回立てようよ!」
     (盛岡市、書家)


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