盛岡タイムス Web News 2014年  11月  20日 (木)

       

■  〈風の筆〉77 沢村澄子 「後半戦スタート」


 第2回「明日の仕事12人」の後半3組、6人の個展がギャラリー彩園子で始まっている。11月17〜22日が、しもかわらさとこさんと浅倉伸さん。24〜29日が阿部龍一さんと川村康徳さん。12月1日〜6日が佐佐木實さんとわたし。個展をリレーする。

  第1回は2012年にあって、この時は横浜在住のKさんが私財を資金に、被災地に明るさを、アートが力を発揮できるようにと、ギャラリーを借り切って、地元作家の発表の場を作ってくださったものだった。

  その時の活動が評価されて、今回はアーツエイド東北からの特別助成を受けている。震災は不幸な出来事だったけれども、それでもそこから何かを作り出していけたなら、ある前向きなモデルケースになるのではないか、という選考理由。

  その助成に応募する時、裏方の事務仕事を手伝って分かったことは、記録の大切さ。盛岡タイムスは第1回の全展覧会を取材してくれていた。岩手日報も頑張ってくれていた。それらの記事を並べてみると、実際の展覧会から受けた印象とはまた別の大事が見えてくる気がして、それはもう、すごい力だな、と思ったのだ。見守ることの大切さを思った。

  わたしたち、アートをやる人間は、一見、見られる側の立場。しかし、見てくださる方がなければ、意味のない展覧会。そしてそれは、作品を見る、ということにおいてだけではない。この世で起こっているあらゆることを見定める、見守る人々のまなざしあってこそ、守られ、淘汰(とうた)され、育まれ、前進する、全てのわたしたちなのだと思う。

  この半月ほど、東京で個展があって盛岡を留守にした。その会場でもたくさんの方々から「被災地はどうなってますか?」という質問を受けた。「今年もクリスマスリースを送ろうと思うんだけど、ただの自己満足ではないかと思って苦しい」とおっしゃる方もあったりして、その場にいらしてくださってた皆さんと、震災についてのいろんな話。「何もできなくてね」と言われたって、そこにも遠く見守ってくださる方々の温かく力強い思いがあった。

  見守る、って大事ですよ。見定める、も大事だと思う。われわれが、日々、もしその務めをおろそかにしたなら、たちまち崩れてしまうわたしたちの暮らし。大阪生まれのわたしから見れば、岩手、盛岡の人は実に寡黙なのだけれど、そのまなざしには寡黙ゆえの厳しさもある。とても大事で美しい厳しさだと思う。

  さて。展覧会です。半月留守して帰ってきたと思えば、あと半月でまた搬入日がやってくる。あらかた作品は用意しておいたつもりだけれど、やっぱりぎりぎりまで書こうかな。新聞記者さんが日々記事を書いていくように、わたしもまた、この目に映ったあれこれや人々の大事を、墨や筆に託して書けたらな、と思う。ギャラリー彩園子(盛岡市上ノ橋町)は午前10時〜午後7時の開廊。土曜日は午後5時まで。
     (盛岡市、書家)


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