盛岡タイムス Web News 2014年  12月  9日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉215 及川彩子 宍戸イン・フィレンツェ


     
   
     

 10月下旬、サマータイムも終わり、いよいよ冬支度という週末、仙台出身の写真家、宍戸清孝さんと、フィレンツェの戦争跡を訪ね歩く貴重な経験をしました。

  今年で60歳の宍戸さんは、若い頃に渡米してドキュメンタリーフォトを学び、今は国内外から高い評価を得ている報道写真家です。

  お互いの知人を介して実現したこの企画は、宍戸さんのライフワークである日系二世米軍兵の軌跡をたどる旅。これまでに、数十年がかりで米国や南洋などを回った宍戸さんにとって、イタリアは最終地。第二次大戦時、独軍からこの国を解放に導いた米軍勝利の地なのです。

  ローマ、ナポリなどに残されたゆかりの地の取材を終え、フィレンツェにやってきた宍戸さんは、日本製のカメラと白黒専用のアンティークなフィルムカメラを胸に、足取りも軽やかな運動靴姿。黒いベレー帽の下から、大きく鋭い瞳がのぞきます。

  日の出から日没、刻々と変わる光に合わせて巡る行程は、郊外の米軍墓地、アルノ川沿いと山岳地の戦線地区、部隊が休息、また勝利の入場をした街角など。時に地面から、はい、伸び上がり、建物のわずかな隙間からのぞき込む…宍戸さんの手にかかると、レンズが無数の視線になります。案内役とはいえ、影や雑音に気遣いつつも、精力的なカメラさばきに圧倒されっ放しなのでした。

  市民を守るため、自ら爆弾を抱えて犠牲になった若き歩兵の記念像の前では、深々と合掌の後、英雄の名誉にふさわしい一枚に入魂、そして、時に感触や匂いまでも写し出そうという狙いか、通り行く老人に声を掛けてインタビュー。今の平和が、シャッターと同時に、次々と「証言」に変わっていくのでした。

  「この街の石畳がいいねえ」。穏やかな口調の仙台弁に心がほぐれます。そして、差し出された撮りたての作品をのぞき込むと、渡る雲は、まるでミケランジェロの描いた天使の翼。秋空に、大きく羽を広げ、戦人の魂を運んでいくようでした。


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