盛岡タイムス Web News 2015年  2月  17日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉220 及川彩子 2月のオレンジ


     
   
     

 一年で最も寒さが厳しいのは、ここイタリアでもやはり2月。けれども、日ごと少しずつ日も長くなり、春に向かう気持ちが芽生えてくる時期でもあります。

  そんな背中を後押しするように、街を彩るのがシチリア産オレンジをいっぱい積んだ大型トラック。南から、はるばるやってきた栽培農家の直売コーナーが、街角にお目見えするのです。月契約で店舗を借り、本格的に店を構える農家も少なくありません。店頭に並ぶ太陽のような果実は、この季節の風物詩。

  産地シチリアでのオレンジの収穫時期は1月から2月。真っ赤な果肉のブラッドオレンジがほとんどで、1`当たり約100円。イタリア人は、それを毎朝搾って飲むのです。オレンジ専門のジューススタンドも街角にありますが、やはり家庭で搾るのが一番[写真]。

  また、イタリアには「朝のオレンジは金」ということわざもあります。「昼は銀、夜は銅」と続きますが、血液のブドウ糖が低下する朝、甘い物を取るイタリアの食習慣は理にも適っているとか。そしてビタミンの体への抗菌効果で「風邪知らず」。

  イタリア人のオレンジへの愛着は、そればかりではありません。読み聞かせ童話の代表作と言えば、18世紀、ベネチア生まれのカルロ・ゴッツイ作「3つのオレンジ」。オレンジから、唇の赤い美しい娘が生まれるこの話は、青い泉の森、白い鳩、黒マントの魔女の登場などで、いかにもイタリアらしい色彩感にあふれています。

  ロシアの作曲家プロコフィエフのオペラ「3つのオレンジの恋」の原作でもあるこの童話を初めて読んだのは20年前。厳寒のロシアで、南国の太陽に思いをはせたのかもしれない作曲家のように、私も、冬になると時折、読み返してみたくなるのです。

  おとぎ話の風景は、新しい季節への誘い。オレンジの山積みトラックを見かけなくなると、春の足音が聞こえてくるのです。


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