盛岡タイムス Web News 2015年  3月  16日 (月)

       

■  〈幸遊記〉218 照井顕 沼田智香子のオール・ザット・ジャズ


 盛岡駅ビルのフェザンを訪れたことがある人なら、誰もが耳にしたことがあると思われる駅デパート案内放送。あれをしゃべっている声の主は沼田智香子さんである。3月14日のきょうも僕はその声を聞きにいってきた。「学生割引キャンペーン」の放送が流れていました。実は彼女10日前の2015年3月4日、54歳で亡くなられてしまったのです。

  FM岩手開局と同時に始まった番組「オール・ザット・ジャズ」。それを週替わりで担当したのが、当時岩手最古のジャズ喫茶「クイーン」佐々木賢一・店主(大槌町・店は3・11の津波で流失)と「伴天連茶屋」瀬川正人・店主(盛岡市・平成元年3月24日閉店)と僕の「ジョニー」(当時、陸前高田・2001年4月から盛岡)の3人でした。

  その開始から数年後に番組アシスタントとして席につき、それを2010年9月に番組が終了するまでの20年余り担当していたのが沼田さんでした。放送中の僕の駄じゃれに時々反応したりすることはあっても、番組を聞く立場を考えてか乗り過ぎる事なく、それとなくけん制し、ジャズとも付かず離れず、気さくで優しい人柄の中にも気品を漂わせ、自分の気持ちを曲げない信念を貫き通した人でした。

  3月9日、盛岡の龍谷寺で行われた葬儀の時、沼田さんが所属するアナウンス会社・パネットの代表・畑中美那子さんが、「岩手の歴史に残る長寿番組“オール・ザット・ジャズ”を担当した“沼ちゃん”」と弔辞で語っていましたが、その沼田智香子さんのご主人・甘竹明久さん(読売岩手広告社社長)が、番組の広告スポンサーを探すなど、裏で妻の仕事を支え続けてもきた二人三脚番組でもありました。

  その主人・甘竹さんが火葬場と葬儀場で智香子さんとのお別れに参列した人たちに語った「人の死というものが、こんなにも悲しいものだということを、初めて知りました」は、参列した全ての人々の胸に深くしみ渡ったに違いありません。そして「あの2011年3月11日に亡くなられた人々の一人ひとりの遺族にもこんな悲しみがあったのだということを知りました」とも。

  これから彼女は声として心に残している方や録音でそばに置いてる人とともにずうっと、幸せに生きていくことでしょうが、智香子さんご本人は、まだ亡くなられたことを知らずにいるのではないかと、僕は感じます。
(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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