盛岡タイムス Web News 2015年  4月  21日 (火)

       

■  〈おらがまちかど〉54 盛岡市 門前寺地区 畜産農家支える屋台骨 嵯峨裕紀さん 将来嘱望される削蹄師 


     
  牛のひづめを整え、健康を守る削蹄師の嵯峨裕紀さん  
  牛のひづめを整え、健康を守る削蹄師の嵯峨裕紀さん
 

 牛のひづめは「第二の心臓」と言われる。心臓から遠く離れたひづめは、血液の巡りが悪くなりがち。そこでひづめ自体が、歩くたびに伸縮を繰り返してポンプの役割を果たし、血液循環を促す。ひづめが伸びすぎたり、変形したりすると、血液を送るポンプ作用も低下するため、体全体の健康に影響を及ぼすという。

  その「第二の心臓」の手入れを任されているのが「削蹄(さくてい)師」。盛岡市玉山区門前寺の嵯峨裕紀さん(29)は、担い手不足が深刻な業界にあって、将来を期待される若き削蹄師だ。盛岡、玉山地域を中心に年間、延べ約1600頭の削蹄を及川洋二さん(36)とのコンビで担っている。

  牛の削蹄は通常年2回ほど。専用のかまと電動やすりを駆使して、ヒトの中指と薬指の爪に相当するひづめを整える。巨体を制御しながらの作業は相当な重労働。牛にけがをさせないよう、できるだけ短時間で、一頭一頭の特徴を捉え、正確に仕上げることが求められる。ひづめの状態から乳量や病の有無を察知し、飼い主に適切なケアをアドバイスするのも重要な役割だ。

  県立農業大学校で学んだあと、県装削蹄師会会長を務める父親の美紀さん(56)の下で修業。一昨年夏に後を継いだ。県内に削蹄師は約60人。資格を持っている若手はいても、実際に家業にしている20代は珍しい。

  親牛と子牛、合わせて約70頭を育てる繁殖農家でもある。1カ月に10頭を超す出産を扱うことも。昼夜、気が抜けないきつい仕事だが、子どものころから迷いなく家業を継ぐ気でいた。

  「やっぱり好きだってことでしょうね。生き物は手をかけただけ、自分にも返ってくる。そこが面白い」と目を輝かせる。

  県農村青年クラブ連絡協議会の会長に就任した。厳しい、厳しいと言われる農業にあえて挑戦しようという仲間たちは、やる気に満ちている。「米、野菜、それぞれ取り組む分野は違っても同世代の頑張りが何よりの励み」と話す。

  農家の高齢化が進み、目に見えて牛を飼う家は減っている。「近所から牛が姿を消していくのは寂しい。一軒でも減らさないよう頑張らなければ。自分の経験も生かして相談にのり、削蹄も安心して任せてもらえるようになりたい」と気持ちを引き締めた。
  (馬場恵)


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