盛岡タイムス Web News 2015年  5月 11日 (月)

       

■  〈幸遊記〉226 斉藤耕一の「ああ直立猿人」


 「斉藤耕一映画音楽の世界」というアルバム(1975年発売)が今、僕の手元にある。このレコードは当時ビクターRCAのプロデューサーだった井阪紘さんが、2013年8月30日、何十枚も僕のところへ贈ってくれたレコードの中に入っていた一枚。その収録曲の中で目に付いたのは「旅の重さ」「約束」「津軽じょんがら節」。あの時、僕の頭は83年に戻って行き、その夜、柴田秀司さんに電話をして頼み事をした。それから1年半経った今年2015年3月26日、彼から電話があり「トランクルームの奥からやっと“直立猿人”の台本が見つかりましたので送ります」。で届いた本というのが、「ああ直立猿人」のあらすじ本と、映画撮影稿の台本。

  企画制作・柴田輝二(活人堂シネマ)“輝二さんは柴田秀司さんの父”。脚本・監督・斎藤耕一(1929〜2009)。登場人物、市原俊幸(藤岡琢也)、照井顕(松崎しげる)、三上寛(三上寛)、宮利恵(中原理恵)、照井美佐子(照井泉沙子)、他ジャズミュージシャンが多数出演する、夫婦3人、子ども1人、犬1匹の三角四角関係ジャズ物語。それがなんと、撮入の1週間前、藤岡琢也扮(ふん)するピアニスト・市原俊幸(当時63才)が急死したことから色々あって結果的に撮影に入れずじまいになった、またしてもの幻の映画。

  柴田、斎藤両氏と新宿にあった市原俊幸さんの店に行き、彼の2枚組アルバム「わが青春わがピアノ」にサインしていただいたら「照井さん江、映画楽しくやりましょうね。」(83年3月3日)だった。飲んだその夜遅くタクシーで斎藤監督と一緒に自宅へ。ジャズのオーソリティーとしても知られていた彼の家の中には膨大なレコードコレクションがあったが、僕は斎藤耕一さんが監督した映画を見たいと言ったら、レーザーディスクや、業務用大型プロジェクターで、先の3作を朝まで付き合って見せてくれた。

  四国へ放浪の旅にでた少女の物語「旅の重さ」。汽車の中で知り合った男と女の3日間の出来事と繰り返される音楽が印象的だった。「約束」。高橋竹山の三味線と斎藤真一の絵に触発されて作った音楽彷徨映画「津軽じょんがら節」の3作は今も僕の記憶に鮮烈に残っている。ああ、それにしてもあの幻の映画で生れた子・直立猿人は今どうしているんだろうか?
(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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