盛岡タイムス Web News 2015年  5月 27日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り─よもやま話〉33 野田坂伸也 奇観・ハンカチの木


     
   樹高12bのハンカチノキいっぱいに花が咲いている  
   樹高12bのハンカチノキいっぱいに花が咲いている
 

 岩手県でハンカチノキと言う名前の木の花が毎年5月中旬になると話題になるようになったのは、岩手大学農学部に植えられているこの木に花が咲くようになって、新聞などに紹介されるようになってからです。名の通り白いハンカチをぶら下げたような変わった花が咲くので初めて見た人は驚きます。

  5月の初めころはまだ3aくらいの大きさだった花が、1日1日とみるみる大きくなって1週間もすると15aほどのハンカチ″になります。詳しく言うと大きいハンカチと小さいハンカチの2枚がくっついていて、その合わせ目におしべとめしべだけで花弁のない花があります。白いハンカチ状のものは花弁ではなく、「総苞片(そうほうへん)」つまり花を包んでいる皮なのです。

  ハンカチノキは中国南西部(四川省など)の標高2千b付近の産地だけに自生していますが、今では日本の植物園などにも普通にみられます。樹高は20b内外になる落葉広葉樹です。

  25年ほど前に東大の小石川植物園で樹木の播種繁殖の研究をしていた人から、「ハンカチノキが咲くと九州や関西からも大勢の人が見に来る」と聞いたことがあります。当時は花が咲くほど大きくなったハンカチノキはこの植物園にしかなかったのでしょうか。今、振り返ってみると、このように植物を見るためのツアーが盛んになったことが、ガーデニングの隆盛の背景にあったのだと思い当たります。

     
  アップで見るハンカチノキ  
 
アップで見るハンカチノキ
 


  私は小石川植物園で30aほどの苗を3本もらい、わが家の裏に1本植えました。その時は、植物園を造る考えなど全くなく、ただ何気なくせっかく珍しい木をもらったからとりあえず植えておこう、と思っただけでした。

  幸いハンカチノキは順調に育ちどんどん大きくなりましたが花はなかなか咲きませんでした。苗をもらったときに「15年くらいしないと咲かないよ」と言われていましたので15年は待とうと思っていましたが、一戸町の保育園の庭に植えた木は10年ほどで咲いたという知らせがきたので、それからはわが家の木も早く咲かないかなと待ち遠しく「咲かないと切ってしまうぞ」と木を脅かしたりしました。そのうち、岩手大学のハンカチノキが咲きだして有名になり、私はますます焦ってしまいましたが2年遅れくらいでとうとう咲きました。

  それからは年々花が多くなり樹高も高くなって、今年は数千の花が咲いてまことにため息が出るほど見事でした。ある霧の日に私の2階の部屋から眺めてみますと、白い大きな花を無数に下げたハンカチノキが窓から15bくらいのところにそそり立ち、その向こうは霧のためにぼんやりとかすんでいて、まさに中国の奥地の現場はこのような状態かと思わせるような風景に見えました。

  花の見頃は約10日で、それが過ぎると大きな白い苞が地面に一面に散り敷いて、紙くずが散らばっているように見えます。また、秋になるとピンポン玉くらいの茶色の実が落ちてきます。この二つはハンカチノキの二大難点です。あと10年もしたら樹高20bの大木になるのではないか、と予想していますがそのころは散り敷くハンカチ≠フ量も半端ではないだろうと少し心配です。


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