盛岡タイムス Web News 2015年  7月 28日 (火)

       

■  〈おらがまちかど〉67 盛岡市 中ノ橋通1丁目 起業家精神で復興支援 椿の森Mini 陸前高田から直送パスタ(馬場恵)


     
  2014年9月にオープンした「椿の森Mini」  
 
2014年9月にオープンした「椿の森Mini」
 

 盛岡市中ノ橋通1丁目の旧唐たけし写場1階にある「椿の森Mini」は、陸前高田市米崎町のバンザイ・ファクトリー(高橋和良社長)直送の「美食パスタ」が味わえるランチレストラン。麺が星型をした「星影のパスタ」をはじめ、5種類の麺と好きなソースを組み合わせてオリジナルの味を楽しめる。

  「コーヒー1杯だけでも、気軽に立ち寄れる店にしたい」と店長の松田春さん(25)。純和風住宅を改装した店内は、風通しのいい座敷もあり、くつろげる。

  高橋社長(53)は、かつて6畳間で画像処理・医療ITシステム開発会社を創業。10年足らずで業界屈指の企業に育てた。開発した医療用画像処理システムは大手電子カルテメーカーのエンジンとして使われ、大学病院などの電子カルテシステム内蔵シェアは50%以上に達する。

  だが、自身は45歳のとき、M&Aで大手企業に株式を売却し、あっさり現役引退。2005年、盛岡市内に趣味的なIT木工の会社サーガを立ち上げた。

  ここでも、木製カップを握る人の手の形にオーダーメードする「我杯」など話題の商品を生み、09年には秋田県仙北市の田沢湖畔に新工房を設立。バンザイ・ファクトリーに社名変更する。

  食分野にも進出し、麺に蜂蜜を練り込んだ田沢湖・蜂蜜冷麺の開発に挑戦。蜂蜜冷麺の販売が軌道に乗り出した矢先に、東日本大震災が発生した。

     
   スタッフの女性たちも気仙地域にゆかりがある。夏のお薦めは星影パスタを使った冷静「和風マリネパスタ」。左端が高橋和良社長  
   スタッフの女性たちも気仙地域にゆかりがある。夏のお薦めは星影パスタを使った冷静「和風マリネパスタ」。左端が高橋和良社長
 


  壊滅的な被害を受けた気仙地方は自身ともゆかりが深い。商売で助けられた恩人もいた。「ここで動かなくてどうする。起業家としての力が試されるのは今では」と自問自答。「被災地で何か一つでも売れるものを開発し、一人でも働く人を増やせれば、自分を支えてくれた恩人にも恩返しできる」。そんな思いで陸前高田市への移転を決断した。

  被災者ではないので助成金は出ない。新工房建設のため、田沢湖畔の工房を売却。陸前高田市米崎町に土地を求めて自宅も新築し、2012年8月、新工房を創業した。
田沢湖畔で研究した製麺業に狙いを定めるも当初は失敗の連続。沿岸地域は気候がまったく異なり、内陸のノウハウは通用しなかった。3年近く試行錯誤し、やっと納得いく製品が完成した。

  新工房で働くのは家族や知人を津波で失った女性たち。いまだ仮設住宅で暮らす人も多い。「喜んで生き生き働く姿を見られるのが何より、うれしい」という。製麺のほか、IT木工や、天然の甘茶を生かした海産物の甘露煮など新商品の開発にも意欲的に取り組む。椿の里miniは、工房直送の商品に対する客の反応を確かめる実験的な店舗でもある。

  忙しい仕事の合間をぬって三重大大学院の博士課程にも通う高橋社長。新たな夢は、新工房を大きくし、さらに地元の若者らを受け入れられる仕事を作り出すこと。「ゼロから出発した起業家精神を伝えられる存在に」と闘志を燃やす。

  椿の森Miniは月曜〜金曜の午前11時〜午後3時半(ただし同2時からはカフェタイム、季節により変動あり)。第2土曜は営業。電話622─9888まで。  (馬場恵)


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