盛岡タイムス Web News 2015年  8月 4日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉232 及川彩子 高原端のロッツォ村 


     
   
     

 南アルプスの裾野に広がる、標高1千bのアジアゴ高原。その中心、人口1万人の、ここアジアゴの街は、教育機関をはじめ、病院、商店街、劇場やスポ―ツ施設などが機能する文字通りの中心地です。

  けれども、大型ショッピング店などはなく、街を一歩出ると牧草地、森、山が広がります。ミラノやロ―マに通じる幹線列車の駅まで、車で1時間。タクシーもなく、自家用車が頼りですが、この18年、不便を感じたことはありません。

  ある「都市構造」の本に、「希少価値ある存在の街作りを誇るイタリア人に対し、日本人は、横並びを好む」とありました。「あちらの街に美術館ができると、ここでも。あの人気店をこの街にも…」と、画一的な街が増えてしまっているというのです。

  この高原に点在する村々を回ると、渓谷沿い、谷間など、地域性を生かした姿に出合うことができます。自然環境ばかりでなく、アジアゴと一線を画す、独自の主張なのです。

  高原の一番西の端に位置するロッツォ村もその一つ。アジアゴから車で西へ30分。左に谷、右に森の斜面が迫る一本道を進むと、街道沿いに並ぶ民家や教会、役場、幼稚園、小学校と雑貨屋があるだけで、病院もない、人口わずか1千人のロッツォ村[写真]ですが、谷を望む地形から日当たりがよく、目の覚めるような緑の谷から湧き上がる霧が、雲海のごとく眼下に広がる光景は圧巻です。

  そして、一番の自慢は、高原一おいしいと評判のジャガイモ。限られた斜面で生産される赤皮のジャガイモは粘りもあり、ニョッキに最適。その評判から、今では国内外から買い付けにくるとか。それでも耕地拡張しないのは、希少価値を誇るロッツォ魂です。

  昨年の収穫祭で知り合い、週一度、ロッツォからピアノのお稽古に来る姉妹の手土産は、いつもジャガイモの皮で育った鶏の生み立て卵。次世代には、卵も名物になりそうです。


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