盛岡タイムス Web News 2015年  8月 19日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り〉39 よもやま話 野田坂伸也 屋根の上のユリ


     
   作業小屋の屋根の上のオニユリ(昨年の花です。今年はこれほどたくさんは咲きませんでした)  
   作業小屋の屋根の上のオニユリ(昨年の花です。今年はこれほどたくさんは咲きませんでした)
 

 花林舎の作業小屋の屋根の上に今年もオニユリの花が咲きました。7月下旬から8月中旬のお盆すぎまで咲いています。作業小屋の上には、薄いところは5a、厚いところは15aほどの土が載せてあり、多肉植物のセダム類、センペルビュームなどと一緒にオニユリを植えてあります。土層が最も薄いところには耐乾性の強い灰色の苔が一面に生えていますが、これは植えたものではなく勝手に生えてきたものです。

  今年は暑いばかりではなく雨が極端に少なかったためユリは枯れてしまうのではないかと心配しましたが、よく耐えて時期になると例年のように開花しました。もっともさすがに一部咲かないところがありましたし、咲いても小さい花のところもありましたが、ユリがこんなに乾燥に耐えられる植物であるということは、毎年見ていたのに今年初めて気が付きました。オニユリは古代に中国から持ち込まれた植物ではないかと言われていますが、そのためにこのように乾燥に耐えられる性質を持っているのかもしれません。

  以前は農家のかやぶき屋根の上にユリが咲いているのをよく見かけたものですが、その風景が懐かしく花林舎の小屋の屋根にも植えてみたのです。10本ほど植えたのですがムカゴがこぼれて増え、今は50本くらいになっています(オニユリは、葉の付け根のところに小さい球根の形をしたものができます。これをムカゴと言い、地面に落ちると発芽して苗ができます。ムカゴは長芋にも付きますがこっちは芋の形をしています)。

  作業小屋は手作りの粗末なもので、窓のガラスがないところがあったり、屋根をふいているトタンがさびてきて来年あたりは雨漏りが始まるのではないかと気になっていますし、壁の板は風化してざらざらで廃屋に近い状態ですが、そのような状態とオニユリの花のだいだい色がマッチして哀愁と懐かしさが混じりあった何とも言えない風情を作り出しています。休憩室のベンチに座っていると目の前にこの眺めがあり、何度眺めても飽きることがなくしみじみと見いってしまいます。実のところ、この景色を陰の主役にして映画ができそうだなあと思っています。

  オニユリは朱色で農村、山村の人と風景の雰囲気によく合いますが、もしヤマユリだったらまた違う情感を醸し出して、仮に恋愛映画を作るとしたらオニユリの咲く家の娘、息子の物語とヤマユリの咲く家の娘、息子の物語はきっとかなり異なる流れになるでしょう。

  オニユリはもともと食用に植えられていたもので以前は農家の畑の片隅にはたいていありましたが、今はほとんど見かけなくなりました。冬に雪の下で野ネズミに食べられてなくなってしまうという人が多いのですが、わが家では幸いその被害はなく昨年は何度かユリ根を甘く味付けして食べました。ほろ苦い味と適度な固さの歯触りがユリ根の魅力だと思います。粉砕して粉にしたものを使った菓子もできるかもしれませんが私は作れないのでご希望の方にすこしおわけしてもいいです。もっとも、ほろ苦いお菓子が人気が出るかどうかは分かりません。

 


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