盛岡タイムス Web News 2016年  12月  17日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 戸塚航祐 欲を持つことの光と影


 
 年末年始の準備に追われ始めた11月、特殊詐欺被害件数の増加が目に留まった。「あなたのアドレスは現金3千万円が的中確定!お受け取りは午後10時まで」、「ご入金明細をお送りします。必ず詳細と入金額をご確認ください」これらは11月以降、記者の携帯電話に届いた架空請求詐欺と思われるメールのタイトルだ。メールは見ることなく破棄しているが、詐欺被害の増加を実感せざるを得ない。

  警察によると、11月末時点で県内の特殊詐欺被害認知件数は99件。前年同期比33件の増で大幅な増加傾向にある。警察に寄せられる被害情報は、60代〜70代の高齢者を対象とした還付金等詐欺被害が多い。また、スマホなどに届くメールから誘導された被害、ウェブ上に表示された警告メッセージから始まる詐欺被害も急増している。

  10月27日に取材し、以後も多くの余罪が判明している盛岡市の詐欺グループ検挙でも感じたが、相手の話を聞いてしまうのが不思議でならない。

  架空請求のメール、もしくはウェブ上に突然表示されるメッセージは、応答しなければ詐欺被害に発展しない。まれに「ネットのアドレスから、あなた個人を特定している」などと注意書きもある場合もあるが、法的な手続きを踏まない限り個人の特定は難しい。

  ではなぜ話を聞いてしまうのか。個人の見解だが、人の「損をしたくない」という心理を利用していると考えてしまう。

  架空請求メールは、もうけ話と思える抽象的で想像力をかき立てる言葉が書かれている。「機会を逃せば、得られたかもしれない利益を不意にする」という可能性を臭わせ「チャンスを逃している」と錯覚を起こさせる。同市の詐欺グループも「絶対損をさせない」と元本保証、高配当をかたって30億円以上をだまし取った。人の心の隙を狙う巧妙な方法だと感じる。

  詐欺に遭いたくなければ欲を捨てればいいと言う人もいる。しかし、欲を捨てて社会で生きることは不可能だ。引きこもり支援をする大学教授が盛岡市で開いた講演会で「欲がない人は生きることができない」と説いた。例えば食欲を捨てることは食事をしないということ。金銭欲を捨てれば、家族を養うこともできないだろう。

  人間社会は金銭に限らず必ず交換が生じる。欲を捨てろとは言わない。欲の塊の記者自身が言えることではない。これから年末年始に入る。お金を使い過ぎる機会があるだろうが、いらない欲をかかずに心穏やかに除夜の鐘を聞きたい。


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