盛岡タイムス Web News 2017年  3月  7日 (火)

       

■  震災で生まれた絆 大事に 地域民と被災者隔てなく 市民運動「モーリオの空」 3月11日に54回目「灯り」 草の根で毎月集う


     
   「モーリオの空」で思いを共有してきた小田中由美子さん、熊谷絵美さん、木津川正芳さん(左から)。11日の灯りでの演奏に向け、音合わせ  
   「モーリオの空」で思いを共有してきた小田中由美子さん、熊谷絵美さん、木津川正芳さん(左から)。11日の灯りでの演奏に向け、音合わせ
 

 市民や商店が草の根的につながり、東日本大震災の被災者らに寄り添う市民運動「モーリオの空」(盛岡市)。2011年9月の発足から地道な取り組みを重ねてきた。犠牲者の月命日に当たる毎月11日、手作りの灯籠に明かりをともし、ゲストの話を聞きながら、震災について考える「11日の灯(あか)り」は今月で54回目。モーリオの空を立ち上げた木津川正芳さん(61)と小田中由美子さん(70)、一緒に活動してきた熊谷絵美さん(35)は、それぞれ、できることを続け、震災をきっかけに生まれた人の絆を大事に育てていきたいと願う。(馬場恵)

  モーリオの空のメンバーは、全員が一堂に会してイベントをしたり、話し合ったりすることが、ほとんどない。思いを共有した人と人とがつながり、できる活動をするのが特徴だ。11日の灯りに共感した商店が店先に灯籠を置いたり、有志で企画した街歩きイベントに被災者を招待したり。その志は、木津川さんが学生支援員として勤務する、もりおか復興推進しぇあハート村の学生寮(シェアハウス)や、小田中さんがボランティアで世話する村内のコミュニティーカフェ「マルシェ」の運営にも生かされてきた。

  沿岸出身の学生たちを囲むご飯の会や村内の草刈りなどには、地域の人たちも協力。マルシェを会場に、山田町の元漁師佐々木勝正さんが開く漁網の編み技術を生かした手芸教室には、内陸避難者に限らず、多くの人が参加している。

  「甘酒ガールズ」は、本宮地区の80〜90代の女性6人の仲良しグループ。2012年11月、村で震災追悼映画「ひとつ」のロケがあった際、6人が、待機する関係者百数十人に手作りの甘酒を振る舞ったことがきっかけで絆を深めた。11日の灯りや学生を囲むイベントに、ほとんど休まず参加。若い学生をはじめ、村に集う、さまざまな人との交流は、甘酒ガールズの面々にとっても生きがいになっている。

  「被災者をサポートするだけでなく、被災者が地域になじめるよう地域の人と分け隔てなくやってきたのは正解だった。被災者以外の人も一緒に集まることで、自分で考え、自分の足で歩めるようになった人が増えた」と木津川さん。「震災があったから出会えた人もいる。あれだけ大きなことを経験し、みんなの中で他人を気遣う思いが強くなった。その思いを被災者に限らず、高齢者や障害者、さらに弱い立場にある人まで広げていければ」と語る。

  大船渡出身の熊谷さんは、小学校の講師を務めるかたわら、ジャズシンガーとして活躍。発災当時は、看護師の母親とともに物資を車に積んで古里の避難所をめぐり、足湯ボランティアなどを続けた。「古里が大変なことになり、最初は、ただ、自分自身も悲しく、つらく、勢いで動いていたところがある」と熊谷さん。震災から間もなく6年を迎える今、肩の力を抜いて先を見詰める。

  「震災からずっと、人の力はこんなにもありがたく、支えにもなると感じてきた。被災者支援という気持ちがメーンになりすぎると、だんだんすることがなくなってしまう。普段の生活の中で、人と人とのつながりに感謝し、自分ができることを長くやっていきたい。それがモーリオの活動にもつながっていく気がする」と語る。

  復興支援ライブなどで演奏する機会も多い。「無理して自分の気持ちを入れるより、歌そのものの美しさを聴いてくれる人と一緒に味わいたい。大事なことは歌が教えてくれる」。月日を重ね、自然にそう思えるようになったという。

  小田中さんは、マルシェの常連となった高齢者が、ひきこもりがちな地域の人に声を掛けてくれたり、子育て中のママたちが自主サークルを始めたりと新しい動きが出てきたことを喜ぶ。「自分たちでできることを見つけ、動き始めてくれるのを見ると、やってきたかいがあったと思う」と話す。

  ただ、地域には、震災の傷を負ったまま、外に出られずにいる人もいる。「沿岸で大変な思いをした人たちは、つらい記憶を忘れていい。直接、大変な思い経験しなかった私たちは、震災への思いをつなぎ、いざ、何かあったとき、互いに助け合えるようになっていたい」と思いを新たにする。


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