2017年 2月の天窓


 2017年  2月 28日 ― ゆがんだ「リア充」 ―
 インターネット世界で産声を上げた新語には悩まされる
▼「リア充(じゅう)をリア充(みつ)と読みタッチ世代」。パソコンのタッチパッドやタッチパネルではない。あだち充さんの漫画「タッチ」の読者と同世代がはまった落とし穴。リア充はネットの電子掲示板で広まり、現実(リアル)生活が充実していることなどを意味する。ネットの対義語をリアルとする捉え方には、ネット感覚がよく表れている
▼コンピューターゲームの画像表現が飛躍的に深化した一時代前にはバーチャル・リアリティー(仮想現実)の言葉が頻繁に聞かれた。今日では略語のVRが新機種開発で使われるものの、特別な使われ方をすることは少なくなった。この理由には実社会や実生活にVRが浸透し、当たり前のこととなってきたせいもあるだろう
▼今月、酔って抵抗できない10代女性を集団で性的暴行した疑いで医師ら3人が逮捕された。昨年は国立大医学部生らが同じような疑いで逮捕されている。有名私立大サークル生の一件も記憶に新しい。VRが当たり前の世代が身勝手に起こした「リア充」は卑劣な「リア獣」だ
▼「タッチ」は野球と恋愛を組み合わせた青春漫画で、登場人物と同世代のハイティーンの共感を呼んだ。誤読のリア充(みつ)からはすがすがしさを覚えるのに。

 2017年  2月 27日 ― 近隣高齢者の茶話会 ―
 近隣居住の現在は80歳前後になる高齢者9人が、5年ほど前に始めた月1回程度の茶話会が今も続いている
▼初回会場にわが家を借りたいと有志が見えた時、茶話会という呼称を敗戦数年後に、祖母から聞いたことをお話しながら会場も快諾。初回もお茶やコーヒーを飲み各自持ち寄りの駄菓子や漬物をつまみ、とりとめもなくおしゃべりをする
▼皆さん、よくしゃべる。ある老婦人は「ずっと寂しく食べるだけの口でした。今は楽しくしゃべる口になりうれしい」とはしゃぐ。いきなり認知症クイズを始める人もいて座がにぎわう。行政に絡む相談もあり終了後に民生委員を紹介した
▼以来、回を重ね互いに節度はわきまえつつ、急病など何か事ある時には家族のように支え合う心の構えもできていく。先月の茶話会では高齢者運転による大事故続出も話題になる。その場には当方など高齢運転者は3人いて、返納しないのかと問われた。皆が3人の車によく同乗するから案じてくれたのだ
▼そこで皆に安心してもらうため3人は、免許証更新時に行う「認知機能検査」で「不合格」の場合は「返納する」と決めていることを伝えた。ここでは私情でなく法的に決める大切さも皆で確認し合う
▼赤の他人が茶話会を重ね親族並みに信頼感を深め、相談し合うようになりつつある。

 2017年  2月 26日 ― 日刊岩手建設工業新聞60周年 ―
 本紙の姉妹紙の日刊岩手建設工業新聞が60周年を迎えた。人間なら還暦。いわゆる「本卦還り」で、人生の苦楽の一巡を祝う節目だ。
▼創刊の1957年は戦後復興が一段落し、日本が高度成長の助走に入った頃。以来、建設業は農林水産業と並ぶ岩手の基幹産業として、地方経済をたくましくけん引した。菊池美文、奥寺一雄、大内豊の歴代社長は業界とともに汗を流し、専門紙の経営にあたった。皆さまに育まれての巡り合わせか、このたび創刊と同い年の宮野裕子社長が就任し、両紙で心機一転する。
▼2度の岩手国体、石油ショック、東北新幹線開通、平成不況と公共事業削減、東日本大震災津波など山あり谷ありの60年。政治に経済に波乱もあったが、地方紙の盛岡タイムスと歩調を合わせ、言説はあくまで建設的たらんとしている。
▼60周年特集のあいさつで宮野社長は、「建設産業は技術、技能と機動力を兼ね備えた専門集団として、国土の社会基盤整備に貢献してきました。加えて自然災害が多発する近年、地域の安全確保や環境維持に極めて重要な役割を果たしています」と、時代の要請と業界の責務を重んじる。
▼建の字は、人偏(にんべん)を付ければ、健やかの意。両紙がソフトとハードを組み合わせ、文字通り健全な復興岩手を設(しつら)えたい。

 2017年  2月 25日 ― 映画「故郷よ」 ―
 1986年4月26日にチェルノブイリで、世界最悪規模の原発事故が起きている
▼映画監督のミハル・ボガニル女史は、母の出身地がその原発エリアだから使命を感じ、原発事故という今日的テーマの映画化に着手する。現地へ飛び多くの被災者の内面も取材。記録映画でなく創作ドラマとして自ら脚本も撮影も手掛け完成させた
▼「故郷よ」と題したこの映画は日本でも4年前に上映したからご覧になった方もおられよう。ただ震災復興機運に福島支援も絡んで、この映画の人気は高くDVD版による地域での鑑賞会も好評だという。人生の激変、郷里喪失も共通する
▼映画では原発が爆発し放射能を放出。火災も発生した当日の人々の動きも描く。事故情報は極秘扱いで何も知らない民間では例えば、消防士のピョートルは婚約者のアーニャ嬢と原発から3`先の会場で結婚式に臨んでいた。皆で華やいでいると消防隊から彼に、緊急出動命令が届く
▼祝宴は暗転。飛び出した彼はそのまま帰らぬ人となる。一方で事故速報を受けた原発技師は、事情は伏せて妻と幼児を逃がし人々に「雨に気を付けて」と声を掛け傘を渡し続ける。やがて全町民は一斉避難を強いられる
▼10年後、町は被爆遺構として観光コースとなり、引き裂かれた消防士未亡人がそのガイドを務めている。
  

 2017年  2月 24日 ― カズ50歳のシーズン ―
 中国春秋時代の思想家孔子が失脚して魯を離れ弟子と諸国漫遊に出たのは50代半ばといわれる。弟子がまとめた「論語」により孔子の名言、格言は今日まで広く知られることになった
▼有名な一つに〜四十にして惑わず、五十にして天命を知る〜がある。それぞれの年齢に照らして自己評価する尺度にも使われる。50歳は天に与えられた使命を知るということと教わった。これを己の限界を悟りその器の中で気負わず過ごすと受け止めれば後ろ向きとなろうか
▼この格言で時に言われるのは孔子の時代と寿命が違うことだが、孔子は70歳過ぎまで生きたといわれ当時としては長寿だった。晩年の言葉とすれば、現代に通用する説得力がある
▼プロサッカーのJリーグはあす2017シーズンが開幕する。世界最年長のプロサッカー選手であるカズ(三浦知良さん)は50歳の誕生日を迎える26日に所属するJ2横浜FCの初戦が組まれている。カズが出場するかどうかは試合になるまで分からないが、50歳Jリーガーのプレーが楽しみだ。15歳で渡ったブラジルのチームとやっと86年にプロ契約してから32年目のプロシーズンになる
▼力量の限界を決めているのは筆者の方。カズは長くプロでいられる努力を惜しまず、限界の常識を破るのが天命とすでに開眼しているのかもしれない。

 2017年  2月 23日 ― 人の心打つ船村歌謡曲 ―
 大戦に敗れた日本では食べる物にも事欠き、昭和30年代半ばくらいまでは子どもを抱えた家庭では、父母らが食糧確保に苦労したことだろう。平穏に暮らす昨今だからか、悲惨な往時がよみがえる
▼人を励ます物などもなかったあの頃に、生き抜く人々の背を押すように新しい歌謡曲が響き始めたことも忘れられない。歌の発信者は昭和28年にレコード化した「たそがれのあの人」で作曲家デビューした船村徹氏である。この曲は同年の平凡社作曲コンクールで第一位となり、レコード化されたのだ
▼以後も同氏作曲の全国的大ヒットが続く。春日八郎が歌う「別れの一本杉」もあの時代に50万枚も売れている。村外れの一本杉の所で「東京へ着いたら便りをおくれ」と言った娘(ひと)と、東京で働く彼との熱い慕情を歌っている
▼同世代が反応し買い求めた光景が目に浮かぶ。歌が都会で働く若者も村で待つ娘さんをも元気にしたのだろう。村田英雄が歌う「王将」は戦後初のミリオンセラーを記録。発売60年後の今も人生応援歌にしている人がいる
▼船村氏には12歳離れた軍人の兄がいて「お前は軍人になるなよ」とよく諭された。その兄は戦場に向かった2月16日に落命する。船村氏も今月同日に他界。既に兄弟対面し人の心を打つ歌の尊さを語り合っていることだろう。

 2017年  2月 22日 ― 小原啄葉さん矢巾名誉町民に ―
 盛岡市在住の俳人小原啄葉(本名重雄)さんが、故郷矢巾町の名誉町民になるという。小原さんの生家は同町和味で旧不動村。句集の一つに「不動」があり、固有名詞とも一般名詞とも取れる
▼「ふるさとは蚯蚓(みみず)よく鳴くそば枕」は帰った生家に泊まった時のことだろう。「炬燵(こたつ)よりつき返されし紙風船」は幼少のひとこまを詠んだ
▼小原さんは盛岡出身の俳人山口青邨に師事。1978年に「樹氷」を創刊し主宰した。県俳人協会の設立に参画し会長、県俳句連盟会長を務め、「滾滾(こんこん)」で県人初の俳人協会賞を受賞するなど岩手の中心として全国で活躍されている。青邨にちなんだ作句も多く「青邨忌与の字橋より粉雪かな」は、青邨の「上の橋下の橋あり雪の町」を思い起こさせる。青邨の詠んだ橋でも中の橋でもない、控えめな与の字橋なところに冬の情緒を感じる
▼2月22日は語呂合わせで猫の日という。小原さんのお母さんは猫好きだったとのことで「脱ぎ捨てしものの中より仔猫かな」と私体験が詠まれる。「肩のぼる仔猫がさきに貰はるる」も飼っていた猫の産んだ子がもらわれた光景を思い出したのだろう。生家の周りは植物や鳥獣、虫にあふれていた。「水底の影も流れて桐一葉(ひとは)」。鳥と植物の俳号もうべなるかな。

 2017年  2月 21日 ― 深い睡眠で元気な老後 ―
 還暦を迎えたのを機に睡眠手帳を付け初めてから、もう17年になる
▼往時はよく眠ることが自慢で、寝坊常習が実態だったから家族や仲間には迷惑を掛けてしまった日が多い。小中高校生の頃は「1日8時間は睡眠を」がモットーだったから、それが自然なリズムになって、社会人になってからもなじんでいたのである
▼それでも60歳還暦には身を顧みて思うことは多く、主治医の先生から「適正睡眠時間」を提示していただき、それを励行し快適な睡眠時間の維持はできている
▼今は 便利な時代で地域の高齢者向け施設でも必要機器を備え、保健師さんによるアドバイスを受けることもできる。自分も勘違いがあり正常に戻るまでには遠回りしたから、反省を込めて書いておこう。一部の重症患者を除く一般の人は70代で5時間か6時間の深い眠りがあるなら、十分と判断されていたのだ
▼当方もそんな地域の保健師さんからも、助言を受け掛かり付けの総合病院の主治医の判断を仰ぎ、過去1年間は5時間30分熟睡で快適な日々を維持している。かつては時間とかも10時間とか、11時間とかと思い込んでいた節もあり、かなり遠回りをしてしまったようにも思える▼人間にとって80代接近は還暦60を霞の中に顧み、古希喜寿も消え80代は大宇宙の扉を両手で開けるのだろう。

 2017年  2月 20日 ― ケレンスキーは政界の外連 ―
 今年はロシア2月革命から100年。ロマノフ王朝を倒して、臨時政府はケレンスキー(1881―1970)が首相となった。
▼この名前は政治史上、ちと評判が悪い。その後10月革命でレーニンらに追われたため、今も政界で「ケレンスキーはだめ」と言えば、「改革派ぶった妥協論者」とか、「お飾り首班」などの含みがある。舞台上の外連(けれん)がなせる役回りだろうと。
▼かつて日本新党の細川護煕氏も、ケレンスキー呼ばわりされた。祖父の近衛文麿にあやかり、大政翼賛会との嫌味もあったが。自民党打倒後の細川連立は暫定内閣さ、すぐ本命のあの人が出てくるよ。
▼実際、細川氏はすぐ政権を放り出したが、その後レーニン役の御仁も天下を逸した。自社連立という禁じ手により王朝が息を吹き返し、永田町は長い内戦に。この間、北朝鮮と中国の外圧が高まったのは歴史の皮肉である。
▼混迷に終止符を打ち、政権交代機能を担保するため、自由党の小沢一郎氏も一枚かんで、共産党を含み、野党共闘へと動いている。しかし過去の離合集散の教訓はしっかりくむべき。ソビエト的な連邦制のモザイクは民族対立が起きれば崩れる。トップは気脈を通じ、裾野はうまく住み分けて往来できる「連峰制」を目指したら。ここは民進党代表の名をはせて。

 2017年  2月 19日 ― いじめ受ける福島の子 ―
 福島原発事故発生から間もなく6年になる。県外各地に避難した人の多くは、今も郷里に帰れずにいる
▼両親らと共に転居し転校した小中高生らも、慣れない学校で初対面の級友らに好奇の目を向けられて戸惑い、つらい思いもしたことだろう。陰湿ないじめを受けたことを親にも先生にも言えず、我慢していたり不登校になった子もいる。そんな少年少女たちも年々に成長
▼親にも打ち明けるようになり、いじめの実態を手記に書いた子もいる。いじめがひどく親など保護者が裁判に訴える動きも起きている。転校した横浜の小学校で級友から「ばい菌」と呼ばれ、国や東電からの賠償金に目をつけ何度も金銭を要求された男児の保護者も、弁護士に託し戦っている
▼一方、千葉県に避難中の20世帯ほどが国と東電に損害賠償を求め集団で提訴。原告の中で児童生徒のいる3世帯でも転入先の学校で、子らがいじめを受けている。「放射能がうつる」「何で福島から来た」などと言われたという
▼詩人の谷川俊太郎氏は「ぼくはおとなしい巨人になりたい あいつが来たら突っ立って 黙って山を眺めている〜自分に負けない巨人になりたい」といじめに苦しむ子らに励ましの詩を贈った。負けない巨人は理想でも実践は難しい
▼でも挑戦して巨人になれたら生涯の財産になる。

 2017年  2月 18日 ― 時代錯誤の北朝鮮 ―
 北朝鮮の金正恩労働党委員長の兄金正男氏が暗殺された。
▼源頼朝は平家を倒した弟の義経の人望を恐れ、追い詰めて謀殺した。平安の昔ならいざ知らず今頃、兄弟の確執から毒を盛ったとしたら、とても今世紀の国と思えない。
▼故・椎名素夫氏は参院議員時代、「独裁者のパラダイス」を発想していた。国際社会に、ろくでなしの暴君がのさばっている。偉そうにしていても彼らの本音は酒池肉林だ。ならば国連がどこかの島を買い取り豪邸を与え、彼らを集め死ぬまで楽しく遊んでもらおう。その代わり島から絶対出さず、身の安全は保証する。これで世界はまともになる。当然、外交家一流のウイットだが。
▼源氏は骨肉で争ったとしても鎌倉幕府を開き、諸大名の源流となった。金日成一族とは比べるべくもない。源氏と違い、彼らにできるのは原子爆弾の実験くらい。強制収容所を作り、国民は飢え、日本人はじめ各国から大勢拉致し、突然ミサイルを撃ち、愚かな火遊びと兄弟げんかの巻き添えで、他国を滅ぼすなかれ。
▼義経が亡命した平泉は頼朝の攻勢に滅んだが、藤原三代の金色堂は世界遺産となった。三代世襲の金王朝は何も残るまい。まだチュチェ思想の「地上の楽園」をかたっているのを見ると、実に腹立たしいパラダイスに、思わず舌打ちしそう。

 2017年  2月 17日 ― 劇画「タイガーマスク」と今 ―
 梶原一騎原作の長編劇画「タイガーマスク」は教訓が多い
▼主人公の伊達直人はレスラーであることを隠し通す。リング上ではタイガー(虎)模様のマスクで顔面を隠し戦う。この劇画は1968年から4年近く週刊「少年マガジン」(講談社)などが連載。テレビはアニメ版を放映した
▼ここでは劇画に沸いた昔を顧み、現代の事例との関連についても触れてみたい。物語の主人公は孤児として児童養護施設ちびっこハウスで育ち、プロレスラーになる決意をする。強くなりお金を貯め孤児施設などに寄付をしようと目標も掲げる
▼やがて彼は施設を出て海外のレスラー養成団体で特訓を受け、覆面レスラーとしてプロデビュー。米国で人気を上昇させて帰国。世話になった養護施設も訪問する。運よく成功した青年を装い園児には贈り物をし、経営難の施設にも多額の寄付をする
▼寄贈、寄付対象は次第に広げていく。群馬から全国に普及した養護施設などへの物品寄贈や寄付は、この劇画に学んでいる。原作を超えられない問題もある。物語の結末で直人が道路に飛び出したよその子をかばい、自身は車にはねられ死んでしまう
▼先日は島根でも登校の列に酒酔い運転車が乱入。73歳の男性が男児を押して救い自身は犠牲になる。直人から半世紀。捨て身の奉仕がまだ続く。

 2017年  2月 16日 ― ティファニーの思わぬ災難 ―
 オードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を」は何度か見たが、カポーティの原作は数年前に初めて読んだ。自由の貴重さをうたった原作と映画の印象とのギャップに、ヘップバーンのキュートさが映画の印象を決めていたと感じた
▼米国は自由の国との言い回しは10代の頃に初めて聞いた。日本の国民も自由になったが、資本主義国家の象徴とも言えた当時の米国への憧憬が反映されたためか
▼主人公ホリーは朝、ニューヨーク5番街に出向きクロワッサンをつまむ。娼婦役のヘップバーンの奔放な行為も、同じことをしてみたいと同性に思わせるから名女優であり名画なのだろう
▼ティファニーと言えば米国の宝飾品メーカー。そのブランド力は世界に及び、日本の若い女性たちに一時期、オープンハートのペンダントが流行した。そんな会社のCEOが辞任した。最近の業績不振の責任を取ったようだが、NYのトランプタワーの警備が強化されたあおりで隣の本店の客足が減少し売り上げに響いたという。警備のため付近のビルの出入りにも手荷物検査があれば足を向ける気もなえる。まさかクロワッサンを没収されることはなかったろうが
▼大統領就任で住まいはタワーから移った。ヘップバーン気取りで朝食を取れる落ち着きを取り戻したろうか。

 2017年  2月 15日 ― サラリーマン川柳入選句 ―
 第30回第一生命主催「サラリーマン川柳」入選百句が先日発表された。この中から上位10句を一般投票で選ぶ。希望者は百句から1句を選び主催社サイトから投票できる(3月17日まで)
▼今回もうなずかせる力作が並ぶがここでは、気ままに目に留まった句を紹介したい。まずは「一枚のトランプ世界を攪乱し」と時の人から。攪乱をつかの間でも昔話にしたハグの笑みは日米共にいい切り札となる。「先を読め先を読むより空気読め」も意味深である
▼「我が課長丸投げだけは金メダル」はサラ川らしく上を皮肉る。一方、お上は好景気と言うが中小の裾野は「賞与なの?中身はいつも寸志です」がしばらく続きそう。他方で若手に手を焼く上司は「新人のトリセツ欲しがる管理職」と、西野カナが歌う「トリセツ(私の取り扱い説明書)」を欲しくなる
▼「青色で申告しても赤字なり」には、自営社長の友が重なる。「値引札貼るまで待とうあと一分」はよく見掛ける光景だ。「『パパすきよ』娘にもらった金メダル」と、こんな娘はパパの至宝だろう。この川柳にも妻が登場する。「上司より妻の決済高難度」が暮らしを律しているのだろう
▼ときには冷淡に見えるAI(人工知能)だが「AIも『愛』に見えるよ婚活中」と浮き立つ時にはいとしい「あい」と読むのだろう。

 2017年  2月 14日 ― JR発足から30年 ―
 今年はJR発足30年。1987年に北海道から九州まで、貨物を含め7社に分かれた国鉄の「jr」たちも30歳。独立独歩の道を歩む。中でもJR東日本は都内のドル箱路線を抱えて収益性が高く、東北新幹線は路線車両が充実し、盛岡から新青森、さらに北海道新幹線が新函館北斗へ、津軽海峡をくぐり抜けて走る。
▼盛岡駅は秋田新幹線との接続、八戸延伸と年々、ターミナル機能を高め、30年間に大発展した。岩手県人はよく経済の西高東低にコンプレックスを抱くが、高速交通網に関して東北は優遇され、地域格差解消の大きな原動力となった。
▼不思議なのは新幹線がいつまで、文字通り新しい線なのかということ。東海道新幹線開通は1964年だから半世紀以上も前。リニアモーターカーが開通したとき、やっと「新」が取れるのだろうか。
▼リニア新幹線が実現すれば10年後に東京と名古屋40分、20年後に大阪とは1時間強で結ばれ、3大都市圏が一体化するという見方がある。静岡県でさえ取り残される危機感があるという。
▼リニア開業により日本経済の優位性が一層、大都会に集中し、新幹線が「東北旧幹線」にならぬよう、6県の政財界は早めに手を打たねばならないだろう。やはり巨大な土木工事が伴うILCとも国家財政上、あまりニアミスせぬように。

 2017年  2月 12日 ― 防衛省重要文書破棄のうそ ―
 東京都が市場豊洲移転問題に関する重要文書を、真っ黒に塗りつぶした状態で関連の会議に提示。都民を怒らせただけではなく、結果的に疑惑を深めてしまったことはご存知の通りだ
▼今度は防衛省の重要文書対応のずるさが露呈した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された自衛隊の部隊が、現地で日々の状況を記録した「日報」を、当初は黒塗りどころか「廃棄した」と偽っていたのだからあきれる
▼今や電子化の時代だ。液晶画面に専用のペンで文章を手書きし、これをボタン一つでデータ化し保存。安全を期しロック機能も備え、再生操作も簡単な「電子ノート」もある。昨今はこれを日記帳に使う中学生もいる。先端をいく自衛隊が簡便で精密な電子記録を利用しないはずがない
▼一方、PKOを監督する防衛当局が日報という重要文書を、紙切れのように廃棄するわけもない。案の定、与党からも追及され今月6日に前言を撤回。電子データで保管していたことを公表した。日報の中に憲法9条背反の「戦闘」状態との表現があり廃棄と偽ったのだ
▼「戦闘」状態の現地に自衛隊が関われば、憲法に弓を引くことになるからである。だが稲田防衛相は戦闘でなく「法的には武力衝突」と解釈すると強弁し幕を引く。法の拡大解釈が続き憲法が崩れていく。

 2017年  2月 11日 ― 敬遠四球が申告制になれば ―
 当時プロ野球阪神の人気選手新庄剛志さんが敬遠球を弾いた打球が三遊間を抜けた。対巨人戦でのサヨナラ安打となり、大きな話題となった。それより世代が上の長嶋茂雄さんも敬遠にまつわる逸話にこと欠かない。敬遠にバットを持たず打席に立つこと1度ならず、さらにランニング本塁打まで放った。ひいきファンには痛快至極に違いない
▼球界の歴史の中で華のあった2人。長嶋さんの場面は見ていないが、新庄さんの一打には何が起こるか分からないスポーツの面白さに浸った。ファンサービスを日頃から心掛けていたからのなせる神業≠ニでもいおうか
▼メジャーリーグでは、申告すれば投手が球を投げなくても敬遠四球と認めるルール変更案が選手会に提示されたという。日本のプロ野球に比べ試合展開が早いメジャーだが、延長は決着まで続き、時間短縮がファンサービスにつながるとの判断らしい。時間短縮が課題の日本もメジャーで実現すれば追従するかもしれない
▼だが待てよ。四球は投手が4球の負担を軽減できるうえ暴投や捕逸を回避できる好条件ではないか。同点や追いかける9回裏、三塁走者が気の緩みを突くスリリングな本盗も、敬遠球をサヨナラ安打する痛快さも奪われかねない。「いわゆる一つの怠慢ですかね」。長嶋さんの見解を聞きたい。

 2017年  2月 10日 ― 川柳で60歳からの主張 ―
 毎年1月の「成人の日」には、「20歳の主張大会」を行う地域もある
▼登壇者はこれからの時代を背負い築いていく人たちだ。これに張り合うように高齢者が応募した川柳などの受賞作品を「60歳からの主張」と称し、同じく「成人の日」に発表。表彰式も実施する恒例のイベントもある
▼これは全国老人福祉施設協議会が主催。前年秋に川柳のほかエッセーや小論文も公募している。応募し受賞した人たちは未来へ歩み出す新成人とは異なり、過去から現在に至る時代を築き生き抜いてきた旧成人である
▼ここでは先月発表の第13回受賞作品から川柳数句を紹介。皮肉やユーモアなども交えた主張に耳を傾けてみたい。「メモ帳を探しもとめて句を忘れ」は79歳男性の作。アイデア研究の現役と履歴にあり笑いを誘うが、加齢はひらめきも奪うのだろう
▼今回も夫が妻を責める句が目立つ。「オレオレとかける亭主を無言切り」(69)「カーナビより先に指示出すかかあナビ」(70)とあり「目がかすみ妻と書いたら毒に見え」(63)とまで言う夫もいる。66歳の女性が詠む「ロボットに愚痴を言いつつ介護され」の背後に険しい夫がいなければいいが
▼「この齢で未婚貧困まだマザコン」と嘆く62歳の男性もいる。非婚時代の草分けかもしれないがカタカナ4字に孤愁が漂う。

 2017年  2月 9日 ― 大正駅舎の大更駅ありがとう ―
 八幡平市のJR大更駅の駅舎が、新築のため94年の幕を引いた。大正の開業時のたたずまいを残し、小さくて温かみある停車場だった。盛岡市の仙北町、厨川、上米内、滝沢市の小岩井なども昔のままに残る駅舎は、沿線の心のプラットホームなのだろう。
▼大更駅開業の1922(大正11)年は、原敬が東京駅に倒れた翌年、関東大震災の前年にあたる。その年、芥川龍之介が「トロッコ」を書き、早世の不安に傾いていった時代だ。
▼「小田原熱海間に軽便鉄道工事の敷設が始まった」の書き出しは、近代化急な世相を物語る。熱海には当時から「楽園」のイメージがあるが、短編は「行きは良いよい帰りは怖い」のしめくくり。
▼かつて大更駅からも私鉄が分岐し、「雲上の楽園」と呼ばれた松尾鉱山と住宅団地に、大勢の人と物を運んだ。閉山に伴い72年廃線。ヤマの最盛期には名だたる歌手が盛岡を素通りして、松尾のホールの興行に向かったという。かつて大更は、きら星の有名人が降り立つ、ご祝儀の駅だったのだろう。
▼やがてJRのローカル線になったが、最後に駅舎を通った高校生は駅員の心配りに感謝し、ホームで名残を惜しんでいた。来年春は新駅舎が出来上がる。1世紀近く人々を送迎した花輪線の大更駅舎に、大きなブーケを贈りたい。ありがとう。

 2017年  2月 8日 ― 鉄幹の歌愛した朱門氏逝く ―
 戦後間もない頃からほぼ10年間、わが家には20代の叔父が同居。彼専用の部屋には地域の若者が集まり、ギターの演奏や歌声でにぎやかになる
▼こちらは小・中学生の頃だったが毎夜のように耳にし、覚えてしまった歌が幾つもある。意味も分からないのに演歌や叙情歌を一緒にそらんじていたのである。既に60年も経過したから大半は忘れたが、「人を恋うる歌」の冒頭なら今でも歌える
▼「妻をめとらば才たけて みめ美わしく情けある 友をえらばば書を読みて 六分の侠(きょう)気 四分の熱」と(作詞・与謝野鉄幹 作曲者不詳)。京都大学の前身でもある旧制三高の寮歌としても、往時は民間でも歌われ普及している
▼先日、作家で文化庁長官も務め鉄幹の歌も愛した三浦朱門さんが91歳で逝去された。その訃報に触発され鉄幹が浮かび、往時の私的歌声暗唱までよみがえった。故人には鉄幹の詩歌を血肉にした逸話もある、ときにはあえて利用をしたこともある
▼歌詞の通りに妻には64年前に美貌の作家・曽野綾子さんをめとった。以来、色紙に一筆求められると「妻をめとらば曽野綾子」とぬけぬけと書き笑いを誘っている。ちゃめっ気に驚き吹き出す光景を懐かしく思い出す人は多かろう
▼85歳の愛妻を案じ守護を誓い、歌を口ずさみながら旅立ったかもしれない。

 2017年  2月 7日 ― 日本人と2人のドナルド ―
 ドナルドと言っても大統領でなくキーン氏の話。ドナルド・キーン著「最初の日本現代人ザ・ライフ・オブ・石川啄木」が昨秋、米国で出版された。初の英語による啄木研究書として話題を呼んだが、新潮社版の段から、岩手の研究陣には賛否がある。前提となる事実関係に少なからず違いありやと。
▼日本は今、ドナルド・トランプ大統領の事実をわきまえぬ批判に恐れ入っている。米国車の不振を、ありえぬ日本の障壁のせいにするとか。名前だけで一緒にしたらキーン氏に失礼だし、といって大統領に追従するつもりもないが、いささかやむを得ぬと思うところがある。
▼米国人と話すと、日本人ほど事実関係の照合を重んじない。細かいことに正確を期さず、でかいことがなぜ言えるというのが日本人。米国人は明確な主張を自分の言葉で表現できずして、細かい事実にこだわるのは意味なしと思うらしい。木を見て森を見ずか、森を見て木を見ずか。
▼だからキーン氏の著作は、批評力において優れて国際的な意義があるし、大統領発言も言葉尻ばかり捉えず、「アメリカ・ファースト」の本音に潜む、歴史的文脈を探った方がいい。反論するにせよ。
▼しかし英語で啄木を書いたのは、やまとごころも知る人ぞ。母国のドナルド騒動に、あまりドキンとしなきゃいいが。

 2017年  2月 6日 ― 高齢世代の明暗 ―
 専門家が高齢者の若返りを指摘する昨今、各地の老人会でも名称若返りを図る動きがある
▼当方地元の老人会新年会でも参加者から名称変更の提案があり、会場から「大賛成!私も前から考えていた」と声が挙がる。長老格のこの人は前に進み黒板に大書する。「名称案@光嶺会A幸齢会B優仁会」と
▼これを論評した人もいる。長老が前から考えていたことを称賛した後、@は髪がなく頭が光る人が気の毒Aは不幸せな人がかわいそうBは良さそうだけど儒教の会みたいと切り捨てる
▼ここで会長が有意義な提案や論評に感謝し、本件は名称3案を含め継続審議とし、世の中の高齢者の実状も見極めながら時間をかけて結論を出そうとあいさつ。再び酒宴に戻った
▼確かに高齢夫婦だけで生活し、一方が病床に伏して老老介護になる事例も増えている。新春酒宴に参加し老人会改称を論議できるのは、一握りの層なのかもしれない
▼昨年暮れには千葉地裁で重い認知症で排せつも垂れ流したままの70代の妻を、長期にわたり在宅介護していた80歳の夫が発作的に絞殺した事件の判決が出た(懲役3年、執行猶予5年)。許せない罪と指弾した上で判決は、8年に及ぶ老老介護など執行猶予の理由も説明している
▼高齢者若返りの時代に一組の老夫妻を守れない行政の無能が悲しい。

 2017年  2月 5日 ― 保護主義は時代の答えなのか ―
 昨年のEU離脱を選択した英国国民投票、米大統領選のトランプ氏勝利は保護主義の台頭を実感させた。グローバル化の旗振り役でもあった米国と国境を越えた連合体の道を歩んでいた欧州の両件は象徴的なもので、EU加盟国では保守派や極右の政党の伸張が著しい
▼保護主義が発展途上国と言われるような国なら、国際競争力で致し方がないと思うが、人や物、情報が国境を越えて行き交う国際社会で、はたして成り立つものか。自国第一の基本姿勢に異論はないが、自国が良ければ他国はどうでもいいという自己偏愛主義が強すぎては困る
▼マーティン・スコセッシ監督のハリウッド映画「沈黙│サイレンス」が話題になっている。監督が故遠藤周作氏の小説「沈黙」を読んでから二十数年、やっと実現したという。16世紀に宣教師が来日し布教が始まったが、秀吉の時代の1587年にバテレン禁止令が出て、幕府が1613年に全国に禁教令を出した。その後、強化された鎖国政策が250年以上続く
▼キリスト教禁止や鎖国の理由は国家体制の保持と国内経済の安定に行き着き、これこそ鉄壁の保護主義だったが、現代とは時代はまったく違う。価値観や主義のごり押しは断絶から衝突を生じかねない。多数派と少数派双方のサイレントの声を拾う努めが必要だろう。

 2017年  2月 4日 ― 大谷が足首負傷でWBC断念 ―
 プロ野球12球団はそれぞれ沖縄や海外などへ飛び、今月1日にキャンプインした
▼今季セ・パ同時開幕の3月31日に向け、各球団がトレーニングメニューをこなしていく。3月7日からはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が始まる。WBCは野球の格式ある国際大会だから各国のチーム編成にも力が入る
▼守備も持ち場ごとに最優秀で打力も備えた選手をそろえる。特に勝負を左右する投手には戦績上位陣を中心に、エース級の快腕剛腕を選抜する。日本チーム「侍ジャパン」も既に陣容を決め、各選手は所属チームのキャンプ場でもWBCに照準を合わせ自主鍛錬をしている
▼県民はじめ全国から「二刀流で世界一を頼むよ」と期待された大谷翔平選手(花巻東高卒)も昨季までの群を抜く投打力を買われ、侍ジャパン入りが確定していた。ところがキャンプ先の米アリゾナから残念な速報が相次ぐ
▼第1報は大谷が右足首負傷で投手出場断念と伝え打者の可能性をにおわせた。だが本人にも会い状況を精査した侍ジャパンの小久保監督は、無理をさせられないと判断し投打ともに見送ると結論を出す。この続報にファンから悲鳴が上がったが、大器を磨く試練として見守るしかなかろう
▼波乱で始まったがWBCにも今季プロ野球にも、変わらぬ声援を送ろう。
  

 2017年  2月 3日 ― 童謡「鳩」の説く関係性 ―
 豆がほしいか、そらやるぞ。みんなでいっしょに食べに来い―童謡「鳩」を思い浮かべる、とり年の節分である
▼今年は昨年末から日本の各地で高病原性鳥インフルエンザが確認され、野鳥に餌を与えないよう呼びかけられている。野鳥への安易な給餌は数年前から注意されるようになり、冬の風物詩でもあった飛来した白鳥へ市民が餌を与える光景が紙面に載ることもなくなった。節分のきょうは神社や寺院の境内で豆まきも行われるが、鳩もお呼ばれされているだろうか
▼あす立春を迎えるが、北国は暦の上だけのことで例年、寒さのピークはむしろこれからの一時期と身に染みている。鳥も人と同じでまだ当分は冬毛をまとい続ける
▼中国の動物園の黄金キンケイが似ていると話題に上ったトランプ米大統領は、就任直後から次々に大統領令を出し、敵や悪と言わんばかりの標的を定めた発言も相次ぐ。標的とされた側は、鳩が豆鉄砲を食らうどころではない。公人となった今は強力な飛び道具が放たれる。その割に日本政府首脳は食らったような顔をさほど見せない。節分が季節の境なら国境は国の境で双方に関わる国際問題なのに他国の内政で済ませられるものか
▼「鳩」の歌詞は、みんなでなかよく遊ぼうよで終わる。北国の冬のように春の足音は聞こえない。

 2017年  2月 2日 ― 水戸偕楽園の梅 ―
 今年は1月5日の「寒入り」から始まり、2月4日の寒明けで終わる1カ月間が、年間で最も寒い時期とされる
▼でも春の足音は着実に近付いてくる。寒明けの明後4日は即立春でもある。毎年今ごろになると水戸市在住のいとこから観梅の誘いがくる。岡山の後楽園、金沢の兼六園と並ぶ全国3名園の一つである水戸偕楽園は、百種類3千本の梅林を誇る公園だ
▼毎年2月から3月下旬まで梅まつりが開催されるので、子どもの頃に一緒に遊んだいとこから今も声が掛かるのだ。この公園は江戸時代の第9代水戸藩主徳川斉昭公が「先憂後楽」の戒めを熟慮し「領民と偕(とも)に楽しむ」回遊式庭園を発案し具体化。1842年に開園させたものだ
▼そんな歴史にも魅了されて毎年駆け付けた時期もある。斉昭公が「〜千樹の梅 清香馥郁(ふくいく)として十分に開く 好文豈(あに)謂(い)う威武無からんと 雪裡に春を占む 天下の魁(さきがけ)」と漢詩を詠んでいたこともその頃に知った
▼梅は百花に魁て清らかな香りを漂わせ開花し春の野を覆いつくす。好文木とも言う梅は「文」の象徴でもあるが、雪下の春を真っ先に占領する姿は「武」でもあろうと説いているのだ。さて近年は座して速報動画を見ていたが、今春は足を運び梅の潔さをめでることにしよう。

 2017年  2月 1日 ― はや如月を迎えて ―
 先日、野田坂伸也さんの連載で、日本のマスコミは選挙までトランプ氏の悪口ばかり並べ立てていたくせにと指摘された。それは確かだ。
▼自分も夏にトランプ氏をくさすコラムを書いた。しかし「ドナルドさん」とファーストネームで親しみを込めていたし、「札付き」の例えは申し訳なかったが、日米関係を心配してのことなので、あまり怒らないでください。
▼日本のメディアは、すごい形相のトランプ氏ばかり載せる。雑誌は「日本を見捨てるトランプ」式の見出しに、仁王さまのごとくカッと目をむき、大口を開ける顔でいっぱい。しかし評伝を読む限り、それはポーズだろう。
▼日本で言えば政商としての小佐野賢治と江副浩正を足し、そこにたけしや田中康夫を掛け合わせたような人。小佐野さんも江副さんも仕事柄、生前は本県と関わりが深かった。知人に聞けば、いろいろあったにせよ素顔は温和、知的で、足跡を残した人だったと。トランプ氏もそうならいいが。
▼いずれ政界履歴なき大統領はアイゼンハワー以来とか。かのファーストネームはドワイドだったから、少し名前が似ていると思いつつ、紺屋町から愛染横丁の通りの角を曲がればお寺さん。山門で、ぎょろり目をむく不動明王さまに世界平和を祈願した。そういやトランプ氏は、不動産王だった。

2017年 1月の天窓へ