2018年12月の天窓


 2018年  12月  9日  ― 米内光政没後70年の「いずも」 ―
 政府が護衛艦「いずも」を空母に改装する計画を打ち出した。必要な装備であっても、中国と建艦競争するなかれ。海上自衛隊は商船の護衛に特化した世界に珍しい艦隊。戦後初の空母で、専守防衛を絶対に踏み外すべきでない。
▼「太平洋戦争で日本は航空機の時代が見えなかった」という指摘をよく聞くが、史実と逆。むしろ日本はゼロ戦や空母に入れ込みすぎ誤った。山本五十六が真珠湾攻撃で航空の威力を世界に立証したため、皮肉にも米国が切り札を手にした。銀翼の量産では日米に雲泥の差があったから。
▼戦局不利になり、海軍内で「戦艦大和を先頭にあえて古い大艦巨砲で戦った方が、米国も航空の力に気付かず、わが軍これほどの苦戦に陥らなかった。山本さんは玉より飛車のへぼ将棋を打った」とほぞをかんだそうな。もう海軍頼みにならずと、陸軍まで空母や潜水艦を作ったほど。
▼今後たとえ中国が原子力空母の艦隊を持とうが、まともに相手にしないこと。自滅を待つのも冷たいから、米国の虎の尾を踏めば昔の日本と同じ運命と、隣のよしみで忠告してやる方がいい。
▼今年は米内光政没後70年。米内の艦隊は揚子江で中国と対峙(たいじ)し、アジア情勢を冷静に見て国際協調派に。旗艦は先代の「出雲」だった。今こそ海の先人に学びたい。

 2018年  12月  8日  ― 年の瀬に戦時下歌人しのぶ ―
 年の瀬が近づく。老齢を重ねると自分の寿命も気になる時節である
▼今は人生百年時代といわれるが、諸病の来歴を顧みても当方は無理だなと冷めた見方に傾く。「ま、70代を全うすれば上々」と鏡の自分を励ます。それを隣室で耳にしたらしい家人が笑いながら言う。「あらあらずいぶん弱気ですこと」と
▼さらに「先日は中3の孫娘に『百歳は超えて花嫁姿見なきゃね」と言い、頬を崩していたじゃないですか」とまた笑いながら冷やかす。最後は「びしっと気合いを入れなきゃ、ほんとに早死にしちゃうよ」ととどめの一言を吐く
▼ここは気分転換をと年末のわが家恒例の茨木のり子の「歌札」読みを提案。「それがいい」と若いころから茨木の大ファンだった家人も乗ってきて、交互に札を読んだ。「ぱさぱさに乾いてゆく心をひとのせいにはするなみずから水やりを怠っておいて」
▼「駄目なことの一切を時代のせいにはするなわずかに光る尊厳の放棄」。いずれも中学生頃から読んできた人が多かろう。「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」と読み家人は「これ私のこと」と笑う
▼「わたしが一番きれいだったときまわりの人たちが沢山死んだ 工場で海で名もない島でわたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった」と札を読みわが家の年は暮れていく。
  

 2018年  12月  7日  ― 明治維新のイメージ一新 ―
 今年の維新150年や大河ドラマの便乗かもしれないが、最近は出版界に明治の元勲や志士を断罪する趣旨の本が目立つ。
▼東北や岩手のアンチ薩長史観と少し違い、「西郷隆盛は嫌なやつ」とか、「伊藤博文は殺し屋」とか、暴露的な文脈の本が多い。そういうたぐいの論調はどうも感心しない。太平洋戦争や日中戦争の意味をうんぬんするならともかく、ちょんまげの世の幕末や明治維新を今さら否定してもナンセンス。
▼なぞらえてみると、もうすぐ黒船が来て大変な時勢になる江戸で、「150年前、元禄の吉良邸討ち入りは無道にござった。忠臣蔵に忠義はあらぬ。赤穂浪士は悪党なり」なんて問答に明け暮れていたら。泰平の眠りにぼけていた人たちと、後世の笑いぐさだろう。妙なたとえだが歴史年表のスケールを繰り上げ、当てはめてみればそうなる。
▼明治維新や戊辰戦争は確かに「勝てば官軍、負ければ賊軍」だった。しかし敗者側だって以降の日本の近代化の恩恵は受けている。それには口をぬぐって、草葉の陰に向かってけちょんけちょんとは、いかがなものか。
▼そんな意趣返しでなく、明治維新を同時代の独伊の国家統一と比較するとか、戊辰戦争と米国の南北戦争を並べて論じるとか、世界的にイメージ一新の日本の夜明けを読んでみたい。

 2018年  12月  6日  ― 流行語年間大賞に方言「そだねー」 ―
 本欄には時々、岩手のお国なまりが登場し、県外の人には首を傾げられることもあろう。恒例の新語・流行語大賞の年間大賞が発表され、北海道の方言「そだねー」が選出された
▼「そだねー」を一躍有名にしたのは平昌五輪カーリング女子。スポーツの試合であれだけ会話が拾われるのは多くない。日本は男女とも出場し、女子が初の銅メダルという躍進でカーリング人気が一気に高まった。日頃スポーツに関心の高くない人も見るスポーツの祭典だったのが広く浸透した結果か。「そーだね」ではなくLS北見の「そだねー」は「もぐもぐタイム」とともに今年の冬季五輪で強い印象を残した双璧であったか
▼流行語大賞のトップ10にはスポーツ関係が4語入った。他はコンピューターゲームのスポーツ「eスポーツ」、サッカーW杯日本代表の大迫勇也選手の活躍にリバイバルした「(大迫)半端ないって」、そして不名誉なアマボクシング界の「奈良判定」だ。残念ながらメジャー1年目の大谷翔平選手の「翔タイム」、隣県秋田の夏の甲子園準優勝「金足農旋風」はノミネートまでだった
▼方言が年間大賞になったのは岩手の「じぇじぇじぇ」が印象深い。芥川賞「おらおらでひとりいぐも」は流行語大賞は逃したが、若竹千佐子さんには岩手なまり満載の新作を期待したい。

 2018年  12月  5日  ― ゆうパックの改善急務 ―
 子息に嫁さんを紹介した縁で、県南の農家の親御さんと親しくなり、米を購入するようになって十数年になる
▼日本郵便が民営化してからは、この県南の農家も毎回「ゆうパック」で米を送ってくる。出荷の際はマイカーに玄米を入れた袋を乗せ最寄り局へ届けたり、逆に局の担当者が車で集荷に来てくれることもある。農家が出荷した米袋の届け先が遠方なら、ゆうパックのトラックで中継もするのだろう
▼当方のように受け取る側は米袋の移動をひたすら待つ。ただ親しい間柄の県南農家の方からは、いつも丁寧に「○○日▽▽時ごろに着くと思う」と事前連絡をいただく。その上、当地の郵便局の配送担当者からも到着日の早い段階に連絡が入る
▼現在に至るまでおかげでトラブルらしいことはない。ただ報道などではまずは人手不足が指摘され、双方の連携不足なのか届け先が不在で配達者が2度3度と再配達に通うという。人手不足に過重労働が加わり若い社員から「体がぼろぼろです」と深刻さを聞いたことがある
▼それらは運営する日本郵便の緊急課題だ。社は今月3日に宅配ボックスを付けにくい家には袋を玄関先に付け、荷物を受け取る実験をした。実験は全国展開も検討中という
▼生産者と消費者という形で今後ともお世話になるので改革改善に期待したい。

 2018年  12月  4日  ― スネカはおっかない ―
 大船渡市のスネカがユネスコの無形文化遺産に登録された。8県10件の「来訪神」の一つ。子どもの頃、大船渡市の母の実家に行き、泣きやまないと「山からモーが来る」と叱られた。モーは毛むくじゃらの化け物という。大きくなり各地に「もんこ来る」と子どもを脅す似たせりふがあり、蒙古襲来の記憶の伝承と教わった。
▼モー、もんこ、蒙古のつながりは納得できたが疑問だったのは、元寇の恐怖なら山からより海から来るものでは。遠野のジンギスカン鍋を担ぎ、荷沢峠を越えて盛までやってくるモーなのやらと考えているうち、あほらしくなって忘れてしまった。
▼スネカをテレビを見て、これぞモーではと思った。元寇うんぬんより、吉浜のスネカの怖さが家々を通じて盛まで伝わり、聞き分けのない子どもを叱る決めぜりふになっていたのではないか。
▼他の来訪神を見るとスネカやなまはげと同じような風習が北陸や九州の沿岸部にある。民俗学的に関連性があるのか。ユネスコ登録で脚光を浴びるが、本来は観光資源でないことや、後継者不足など団体によって当惑もあるという。
▼「どごだりさ引っ張り出さないでけらいん」と言われるかもしれないが、この機会にスネカを内陸でも見たい。すねかじりのわらすは、盛岡辺りにもいっぱいいそうでねすか。

 2018年  12月  3日  ― 岩手リンゴの知名度アップ ―
 「きしやは銀河系の玲瓏(れいらう)レンズ/巨(おほ)きな水素のりんごのなかをかけてゐる」。詩「青森挽歌」の一片のように宮沢賢治は作品にリンゴを数多く登場させる。銀河系になぞらえたり、その匂いなどで臨場感を与える単語として多用した。賢治の時代と同様、現代も匂いで存在感を示す
▼国内生産量は青森県がダントツで半分以上を占める。次いで長野県、さらに差が開いて山形、岩手両県と続く。リンゴと聞いて思い浮かべるのは青森、長野というのが現状だ。だが、岩手での西洋リンゴ栽培の歴史は古く、1875年に始まったとされる。しかも他県輸出≠ヘいち早く、80年ごろには東京に出荷されたようだ。今は3番手、4番手に甘んじている
▼最近、本紙にリンゴの記事が続いた。ギフト専用ジャムの開発や多品種を扱う小売店のオープンは新たな楽しみ方の提案にもなっている。JAいわて中央は今年からカナダを加えて、4カ国・地域に輸出する。県内では「岩手アップル2weeks」が1日から展開中。県民に地元産をアピールしている
▼30年以上前になるが、盛岡の親戚が栽培していたリンゴを送った首都圏の友人が初めて食べ、長野産に慣れた舌でうまいと喜んでくれた。岩手産の人気が高まり農業者に反映されれば、賢治も喜ぶことだろう。

 2018年  12月  2日  ― お歳暮送料値上げから無料へ ―
 東京に住むいとこから、例年より1カ月も早くお歳暮が届いたのには驚いた
▼お礼の電話を入れて「びっくりしたよ」と言うと細君に代わった。彼女は「早すぎてごめんなさいね。でも事情があったんです」と笑いながら説明する。11月半ばごろから「今年は大手百貨店などがお歳暮の送料を値上げする」という情報が都内を駆け巡ったという
▼確かにネットでも11月24日のNHKサイトには「お歳暮の配送料、デパートで値上げ相次ぐ」との見出しで、今年はデパート各社の間で商品の配送料を値上げする動きが相次いでいると伝えている。同日の読売オンラインでは「値上げ相次ぐ配送料」に次いで「お歳暮離れ」の加速が懸念されると述べている
▼先のいとこ夫妻も周囲に「お歳暮予算は限度があるので」と値上げ分の件数を減らす人が増えていると嘆く。しょせんは客が離れては大手も成り立たない。百貨店業界も歳暮送料値上げが小手先の愚だと気付いたのだろう。商戦は意外な展開を見せている
▼高島屋のお歳暮オンラインストアは、全国送料無料を打ち出す。大手の三越も値上げどころか「お歳暮送料無料」を掲げる。西友に至っては「お歳暮最大40%オフ&送料無料」と客を喜ばせている。売る側も買う側も人まねではなく、個々に賢く判断し良い歳末にしたい。

 2018年  12月  1日  ― 平成最後の師走 ―
 平成30年も残すところ1カ月。平成最後の師走に入った。クリスマスという輸入文化は市民権を得て久しいが、新しい年を迎えるための12月には日本人ならではの心持ちがあると思う
▼「平成最後の」という言い回しが今年乱発した。来年4月末に天皇陛下が退位され、5月に皇太子殿下が新天皇に即位される。生前退位という明治以後で初となる改元の仕方ならではの産物だ。このような大々的な「最後」の使われ方は「20世紀最後の」以来ではなかろうか
▼改元に居合わせたのは昭和から平成への1回だけの昭和生まれだが、日本人の大半も同様。大正から昭和を知る方も100歳近くでないと当時の記憶はないだろう。106歳を超えるわずかのご長寿が3度目の改元を経験できる。改元が初めての若者も多いか
▼昭和天皇が重篤なご容態になり、国内に自粛ムードが広がったのは1988年秋からだった。新年のお祝いも慎ましく89年を迎えた1月7日に崩御された。2月24日に大喪の礼が営まれ、そんな事情から新天皇の即位も祝賀とは違った
▼陛下は今月23日、天皇として最後のお誕生日を迎えられる。退位が決められているため、すでにご公務に「最後の…」と報じられている。これからも皇后美智子さまとともに「最後の…」のご公務をされる残り5カ月となる。

2018年11月の天窓へ